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サーカス団がかつて物乞い児童であった人々を救う
英題:The circus helping Senegal’s former child beggars
記事リンク:https://www.bbc.com/news/world-africa-59175763
内容と背景:
こんばんは!Pick-Up!アフリカをご覧いただきありがとうございます。
本日はセネガルで物乞い児童たちの社会復帰を支援しているサーカス団についての記事をピックアップしました。
セネガルは人口約1600万人の国ですが、そのうち物乞い児童の数は約100万人にまで登り、最も若くて2歳、平均では11歳の子どもが物乞いを行っているという現状があります。(文末記事1, 2)このようにセネガルでは物乞い児童の問題は重大であり、人権的な観点から、国際的にも解決が急がれている問題です。
サーカス団による物乞い児童に対する支援
今回の記事ではこうした現状を受け、セネガルで唯一のサーカス団が物乞い児童やかつて物乞い児童であった人々に対して社会復帰の支援活動を行っていることが紹介されています。
記事では、Sencirkと呼ばれるこのサーカス団は(元)物乞い児童を積極的に雇って彼らの雇用を創出したり、ストリートチルドレンの更生ホームなどでワークショップを開くことで新しい人材を発掘するとともに、彼らのメンタルヘルスの向上に貢献していると述べられています。
サーカスがメンタルヘルスの向上につながることは想像しがたいかもしれませんが、記事ではこの例として、サーカスの団長のエピソードが紹介されています。団長はかつてダーラと呼ばれる学校で下宿生活をしており、その時の虐待による精神的ダメージによって人と目を合わせる事や触られることに対して拒絶反応を見せるようになりましたが、サーカス団で活動する中でトラウマが軽減され、この拒絶反応がなくなり、感情をコントロールできるようになったと紹介されています。この例のように、サーカスのワークショップが児童の自信の向上や、トラウマの軽減に貢献すると述べられています。
物乞い児童を生み出す教育問題
先ほどダーラという学校について少しお話ししましたが、こちらの記事ではこの寄宿学校での教育システムがセネガルでの物乞い児童の問題の原因の一つであると述べられています。
このダーラと呼ばれる学校は都心部に複数存在するイスラム教系の寄宿学校であり、セネガルでは主に貧困家庭において、親が息子をこの学校に通わせ、教典であるコーランを学ばせることが一般的です。しかしダーラは政府による規制を受けていないため、程度は様々ですが、多くの生徒は極度の貧困状況に置かれ、マラバウトと呼ばれる教師が設定したお金や食料のノルマを達成するために、彼らは起きている時間の多くを物乞いに費やします。
物乞いがうまくいかず、マラバウトに差し出すノルマを達成できなかった場合や、授業で悪い成績を取った場合は体罰や虐待が与えられ、生徒たちは精神的、肉体的な苦痛を受けることになります。
それに耐えかねてダーラから逃げ出す生徒もいますが、自分だけでは親元に帰ることができずにストリートチルドレンとなる場合が多く、逃げても逃げなくても物乞いとして不安定な生活を送ることになるのです。
問題の根本的解決を目指すNPO団体
こちらの記事(文末記事1)には、maison de la gareというNPO団体がこうしたダーラにおける強制的な物乞いや虐待をなくし、物乞い児童の問題を根本的に解決することを目的に活動していることが示されています。
この団体は物乞い児童の問題の発生原因が子どもに物乞いを強制し、虐待を行うダーラ、ダーラに子どもを送る親、見て見ぬふりをする社会にあるとし、ダーラのマラバウトと対話をすることで虐待や物乞いの改善を目指す活動や、親に対して子どもがダーラでどのような状況にあるか伝えたり、ストリートチルドレンとなった子どもを親の元に返す活動も行っています。こうした活動により社会の問題意識を高めることで、物乞い児童の数を減らそうと試みています。
コロナウイルスと物乞い児童
こうした様々な活動が行われている一方で、こちらの資料ではコロナウイルスの影響で彼らが以前よりもさらに厳しい生活を強いられていることが示されています。
資料では、コロナウイルスによる移動規制のために児童たちの物乞いによる収入が激減し、夜間外出禁止令が出たことで彼らのうち多くが夕食にありつくことが出来なくなったという事実が共有されています。実際に児童たちに対して外出禁止令期間中最も辛いことを聞いたアンケートでは、圧倒的多数が空腹と回答しており、彼らが危機的状況にあることが示されています。
また他のアンケートでは、10人に4人が以前よりも多くダーラによる暴力や搾取を受けるようになったと回答し、10人に3人が以前よりも社会からスティグマ化されていると感じると回答しています。このようにコロナウイルスの影響で彼らは以前よりも肉体的、精神的苦痛にさらされるようになり、5人に3人が幸福度の低下を回答しています。
これらの団体は精力的に活動を行っており、物乞い児童の問題の改善に向けて重要な役割を果たしています。しかしながら、コロナ禍で民間の活動が規制される中、彼らの努力のみでは支援を行き渡らせることができないのも事実であるため、今後の政府の活躍に期待が寄せられます。
この件について新しい情報が入りましたら今後お伝えさせていただきます。よろしければ下の関連記事もご覧ください。
関連記事、資料:
1.Thousands of boys forced to beg by religious schools in Senegal-Link
2.Au Sénégal, l’épineuse question de la mendicité des talibés-Link
3.L’Impact de la COVID-19 sur les Enfants Talibés au Sénégal-Link
4.世界の児童労働従事者数、20年ぶりに上昇か?【Pick-Up! アフリカ Vol. 183:2021年6月21日配信】-Link
5.児童労働:ビジネスと人権〜コンゴ民主共和国の鉱山の課題【Pick-Up! アフリカ Vol. 10 (投稿:2020年10月15日)】-Link
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