訳 : 「家族を養うことができない」:変動するココアの価格、西アフリカの農家を貧困へと追いやる。

英題:‘It’s difficult to feed our families’: Volatile cocoa prices are pushing West African farmers further into poverty

記事リンク:Volatile cocoa prices are pushing African farmers further into poverty (cnbc.com)

こんばんは!いつもPick-Up!アフリカをご覧いただきありがとうございます。

今回ご紹介させていただくのは、コートジボワールのカカオ生産農家に関する記事です。カカオとは、みなさんもご存じのチョコレートの原料となる果実です。カカオは中央アメリカから南アメリカの熱帯地域を原産としており、平均気温27℃以上、高温多湿の地域でしか栽培を行うことはできません。

カカオ栽培に適した気候帯であるアフリカにも主要な産地として有名な国が多くあり、特にコートジボワールは世界最大のカカオ生産国となっています。Nation Masterによる調査結果からも明らかになっており、2019年度のカカオの生産量は約202万トンで世界第一位となっています。第二位のガーナが約95.7万トン、第三位のインドネシアが約60.7万トンであることからも、世界のカカオ生産におけるコートジボワールの占める割合がいかに大きいかが分かると思います。またランキングの4位、5位にはそれぞれナイジェリア、カメルーンがランクインしており、カカオ生産量上位5か国のうち、実に4か国がアフリカの国となっています。

コートジボワールのカカオ生産

今回の投稿では、コートジボワールのカカオが不当に低い価格で買い取られているという問題について取り上げます。

記事によると、カカオ市場の変動により農家の収入が前年比で最大21%減少するとみられており、大きな問題となっています。コートジボワールのカカオ生産者への取引価格は、2020年10月の時点では一キログラムあたり1000西アフリカCFAフランが支払われていたのに対し、今年の最低取引価格は現時点で825西アフリカCFAフランとなっています。またコートジボワールのカカオ農家の平均世帯構成は8人であり、平均収入は年間約3000ドルであるとされています。一方で一世帯の生活費を賄うためには、年間約7500ドルが必要であると結論づけられています。

このような貧困状態から農民を保護することを目的として、2019年にコートジボワールとガーナ当局はカカオ1トンあたりにつき、400ドルを上乗せする制度(LID)を制定しました。

しかしさらにこの問題を深刻化させているのが、大手のチョコレート企業が高い市場価格を支払わないようにしている事です。

先進国を中心に存在する一部の多国籍チョコレート企業はこの上乗せ料金を拒否したり、これを避けるために先物取引による購入を利用するなどして、非常に低い価格でカカオを仕入れようとしていたことが分かっています。ロイター通信によると、Mondelez International社はLIDの支払いを拒否したと関係者に告発されましたが、同社はこれを拒否しています。

NGO団体のVOICEネットワークが2018年に発表したレポートによると、2017年代半ばにコートジボワールのカカオの価格が下落したのちに、大手チョコレート会社の利益を増加させたことも明らかになっています。

こちらの記事では、南半球のカカオ農家の実際の収入面での問題について言及されています。カカオ生産に関わる多くの農家は1日1.25USドル以下の生活を強いられています。加えて、干ばつや異常気象、害虫による減収など、収穫量の不安定さも農家の収入に影響を及ぼします。このような不安定な状況から、目の前の暮らしのための収入がすぐに必要である農家は先物取引でカカオを売買することも少なくないそうです。しかし売買を仲介するトレーダーは、その豆を保管し、市場の流通量をコントロールできるため、結果として農家への収入が市場よりも低い価格となってしまうこともあります。

このような正当性、公平性を欠いたカカオの取引は、アフリカのカカオ栽培に根付く様々な社会問題、森林破壊や児童労働を助長しています。

こちらの記事によると、シカゴ大学が2020年に発表した文献により、2019年時点で未だに世界で159万人もの子供たちがカカオ農場の現場で児童労働に従事させられていることが分かりました。またカカオの買取価格が十分に得られないために、小規模農家はカカオ農園の敷地を広げることで収入を増やそうと考えます。しかしながら、それは結果として森林伐採による環境破壊を引き起こすだけでなく、カカオの供給量が増加することで、カカオの単価を下げる要因ともなっています。

課題解決に向けた取組み

そんな中で、カカオ農家が抱える課題を解決すべく着手している企業も現れています。オランダのチョコレート会社Tony’s chocolonelyは、未だに児童労働が残るチョコレート業界において100%児童労働を行わないチョコレートを作ることをミッションに掲げており、農家に対して購入金額に加え、プレミアムを支払っています。2021年にはこのプレミアムの金額を、従来の1トン当たり462ドルから793ドルに引き上げる計画を発表しました。

この取り組みに関しては、こちらの記事に詳しく記載されております。ご興味のある方は、ぜひご覧になってみてください。

また、アフリカのカカオ農家の現状が問題視される中で、企業以外の働きも活発化しつつあります。

現在カカオやコーヒー等の原産国の農家に対して、より公正な価格での取引を推奨する取り組みとして、フェアトレードが存在します。フェアトレードとは、その名の通り生産者と購入者(主に加工・製造者)の双方に公正な価格での商品の取引のことです。フェアトレードという言葉が一般的になる以前の商取引では、主に先進国の企業が、生産国である発展途上国の農産物などを輸入する際に、一方的に設定した低い価格で仕入れることで大きな利益を得ていました。一方で、生産者側には少ない収入しか与えられず、貧困状態から抜けられないという状況に陥ってしまいます。

現在アフリカでのフェアトレードの取組みも、社会課題を解決を目指す世界的な風潮を受け、年々広がりを見せています。こちらのサイトによれば、2018年から2019年にかけて世界のフェアトレードのカカオの取引量は31%増加しました。

またフェアトレードには、フェアトレード認証商品に対して一定の追加料金が課せられており、それらは農産物の売り上げとは別に、フェアトレード・プレミアムとして生産農家や労働者に還元されます。同サイトによると、2018-2019年におけるアメリカのフェアトレード市場だけでも、約196万ドルがフェアトレード・プレミアムとしてカカオ農家に還元されました。(参照記事

そのほかにも、独立したオークションでの売買を行うことで、小規模農家にも正当な品質評価での取引の機会を平等に与えることができます。

東アフリカはケニアをはじめとして茶の栽培が盛んな地域であり、こちらのデータによると2019年のケニアの茶の生産量は中国、インドについで世界第3位であり、約50万トンを算出しています。ケニアやウガンダを中心として東アフリカでは茶の生産が盛んな地域が多く、この地域で生産された茶葉はモンバサ・ティーオークションを通して売買が行われています。ケニアのモンバサ港で行われているオークションであることからこのように名づけられ、スリランカのコロンボに次ぐ世界第二位のオークションとなっています。

こちらの記事によると、このオークションの特徴として、まずブローカーによって品質ごとに茶葉がカテゴライズされます。そうすることで、等級ごとのセリが行われ、小規模農家にも均等に出品でき、国や地域に関係なく販売を行うことができます。一方で、価格の変動はほかの市場価格や経済、社会状況に左右されるため、前述したような不当なカカオの取引価格の下落に加担しているとも言えます。

いかがでしたでしょうか。この問題を解決するためには、我々消費者がどこの会社のチョコレートを買うのかという一人一人の選択が重要になります。カカオに限らず、第一次産品の生産現場の現状が世界的に問題視されるようになったことで、未だにアフリカの農業に潜む貧困の問題が近いうちに解決されることを願うばかりです。

私たちpick-up!アフリカは、今後もアフリカ農業、貿易に関するニュースを発信していきます。様々なトピックからアフリカの今をひも解いているので、ぜひほかの記事もご覧ください。

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