目次
アフリカ大陸自由貿易圏を加速させる:パン-アフリカでの貿易の機会の増加を呼びかける
英題:“Gearing up for the AfCFTA”: African youth call for increased Pan-African trading opportunities
記事リンク:
https://www.africa.undp.org/content/rba/en/home/presscenter/articles/2021/afcfta.html
内容と背景:
アフリカでここ近年の目玉的取り組みと言って過言ではないアフリカ大陸自由貿易圏(Africa Continental Free Trade Area: AfCFTA)。こちらはこれまでも共有してきましたが、アフリカ各国の他大陸、他国への貿易依存を一つの課題と捉えるとともに、物理的なインフラが整っていないことを中心としたハード・ソフト両面での様々な障壁で全貿易に占める割合で低い数値(20%以下)を記録してきた、アフリカ大陸内での貿易の促進・活発化と、アフリカ大陸での製造業を中心とした経済発展への取り組みが相乗効果的に活発化することを目指した取り組みです。
2018年3月にルワンダの首都キガリで開催されたアフリカ連合の首脳会合でキガリ宣言が行われてから、今年1月1日に実際にこの取り組みのもと貿易が行われるまでになりました。
しかし、54カ国もあるアフリカにおいて、法整備も違えば、関税政策も違うため、それらの違いを少しでも共通認識を高め、そのもと貿易することでより大きな経済効果が得られるとされています。こちらの記事ではAfCFTAの施行により目指されている、2022年までの域内貿易が全貿易の52%を占めることで、約3.4兆ドルの経済効果、最大約4500億ドルの収入増加を実現するだけでなく、貧困率の減少(3000万人を極貧の貧困層から引き上げる)、そして、雇用の機会の創出などの恩恵をもたらすことが期待されています。
ということで今回は、域内貿易協定の施行により期待されている雇用機会と若者を見ていきます。
今回ご紹介します記事は、7月21日に行われた、「How Can Africa’s Youth Make “One African Market” Magic Reality?」というUNDP(United Nations Development Programme: 国連開発プログラム)とYouLead Africaを中心に開催されたイベントを取り扱っています。
YouLead Africaとは、アフリカの若者の力を大陸の発展のために政治など様々な舞台で活用・活躍することを目指して始められた活動で、タンザニアとデンマークとの間の外交の取り組みの中で生まれたMS Training Centre for Development Cooperationと東アフリカ地域にある国々の地域経済共同体であるEast Africa Community(EAC: 東アフリカ共同体)との共同の取り組みです。
さて記事によると、イベントはいくつかの部に分かれていたようで、第一部として、AfCFTAの施行により期待される機会に関して話し合われました。登録した約900人(1万人以上がライブストリームにて参加)の参加者からは様々な意見が共有され、農業製品の貿易やデジタルサービスを通した国境を超えた新たな機会が期待されるなどの意見が共有されました。
UNDPアフリカ地域事務所のAhunna Eziakonwa所長のAfCFTAが実現可能な取り組みであるとともに、アフリカにあるタレント(才能)や質を持ってすれば実現できると信じる段階に踏み込んできたという意見や、若手の起業家(アントレプレナー)がこの新たな取り組みである自由貿易圏が大陸内の様々な国での取り組みが本当の意味でどのようなインパクトをもたらすのか、そして、この新たな取り組みが若者にとってどのようなものになり得るのかという質問に答えるため、若者がより多くの情報を得ようとしているとの考えも共有されたとも書かれています。
記事ではAfCFTA事務局内でAfCFTA Academyと言われる、若年層世代にAfCFTAのことを啓蒙する取り組みが検討されているとの情報も共有されました。このアカデミーで研修などを受けたのち自国に戻り、他の若者を巻き込むことが期待されているとも共有されています。
また記事では、アフリカのビジネスシーンですでき活躍している若手起業家なども意見を共有したと書かれています。政治からにアフリカ内の規制などのインフラを統一化に向けて取り組むことを求める意見や、アフリカビジネスにおいて負の意見が多く広がっていることなどを指摘し、正しいアフリカの姿を伝える必要があるとの意見も共有されたと紹介されています。
中には、アフリカにおけるアントレプレナーシップが失業率に対する取り組みでしかないというご認識があることから、ビジネスを自らの力で前に進めていくことのできない若手が同分野に入っていくけ一家に繋がっていることを指摘し、AfCFTAという大きな舞台では他者の真似をするだけでな生き残れないところで、自らの付加価値を見出す必要があるとの意見も共有されました。
国際貿易センターの発行したレポートでもこの点につながる考え方が共有されています。雇用機会の創出が思うように進んでいないことや、失業率の高さを指摘し、起業することや中小企業を設立することが、若者がインフォーマルセクターから、フォーマルセクターに参加することを実現する一つの方法であるとし、AfCFTAがあることで、この動きをさらに加速させる可能性が高まるとしています。
イベントで最後に、「アフリカによるアフリカの建設」を一つのモットーにアフリカの若者を集めて様々な取り組みを行なっているハーバード大学の一つの学生団体でもある、Youth Alliance for Leadership and Development in Africa (YALDA)がUNECA(United Nations Economic Commission for Africa: 国連アフリカ経済委員会)、ITC(International Trade Centre: 国際貿易センター)、AfCFTA事務局、そしてUNDPとともに若者を参加をターゲットとした、「AfCFTA Youth Creative Competition」というコンペの開催を発表したと記事では伝えています。
というように、今回紹介した記事からは、一般的に言われるアフリカの経済発展からおいて行かれている、非雇用者がいる中、その影響が若者により見られることや、若者に対してビジネス環境に関する啓蒙活動などをすることで、様々な情報や彼らが関わりやすい環境を作っていくことの必要性があるというような内容が読み取れました。
こちらの記事では、新しく制定される政策などで常に「若者や女性に対する影響や恩恵」などを念頭におく必要があり、これを意識的に行うことで若者の活躍の場を作り出すことができると話す、African Peer Review Mechanism(APRM:アフリカ相互検証メカニズム、あるいはアフリカ相互評価メカニズム)の専門家であるDr. Misheck Mutize氏の意見や、AfCFTA事務局の技術専門家のPrudence Sebahizi氏も共有されています。こちらの資料(資料1、資料2)によると、この取り組みは、アフリカ大陸内で選ばれた専門家の集まりで、大陸としての経済成長や政治的安定などを促進するための方向性を示した評価基準であり、参加国が相互的に取り組みなどを検証していくことを目的に作り出されたものです。
特にAfCFTAの施行により、技術面、タレント(人材)面、そしてコラボレーションなどの要素がアフリカでのビジネスのリープフロッグ、そして雇用の創出され、それが若者にとっても良い環境を作るとの期待も共有されています。
また、こちらの記事ではMasterCard Foundationの取り組みを紹介しされています。同記事は、インタビュー形式で進められており、質問の中には、なぜ同団体の取り組みの中心的要素に若者を据えているのかという質問に対しもあり、MasterCard Foundationの代表であるReeta Roy氏が答えています。答えとして、2100年には世界の若者の約半数がアフリカにいるというデータを共有するとともに、同大陸における技術の進歩の速度が早いことや、それによって「働くこと」に対する理解も変わってくるとし、さらに若者にとって雇用の機会も広がるだろうとの考えが共有されています。その中で同Foundationがカタリスト的な存在で、これらの動きを促す取り組みを共同で作り出す役割を担うだろうとも話されています。同団体は45カ国で活動しており、そのうちアフリカの30カ国で活動していることから、彼らがアフリカの労働力への関与の必要性を示しているのが伺えます。
こちらのブログでは、若者がこのAfCFTAの恩恵を受けるためにすぐに取り組まれなければいけないこととして、若者への情報の共有や啓蒙活動の必要性、資金へのアクセス、教育への取り組みの3点挙げられており、それらへの取り組みが彼らの力を最大限に引き出し、さらにはアフリカの可能性最大化につながるとしています。
元記事でも新たなコンペを共同設立している機関として紹介されているUNECAはこの4月にAfCFTAとスポーツとのつながりを見出し、エコシステムを学ぶとともに、機会の創出を目的としており、中でも、若者や女性がこれらの機会の恩恵を受けられるよう指導者と、プログラムに参加したい人たちを繋ぎ、メンターシップの関係性を構築するという旨のプログラムを設立したとこちらの記事で共有されています。
というように、広いアフリカ大陸において、まだ基盤の固まりきっていない中で、若者がどのようにその流れに関わっていくのかが定義されていないという混沌とした状況に取り巻かれているように感じられます。しかしその中でも、情報が行き渡ることが一番の課題であることは何名かのインタビューからも明らかだったように、雇用機会の創出の前に、そこに導く道を示すこと、そしてそれらの道を進む上で必要となる教育や指導が必要ということでしょうか。
昨日の記事の中で紹介されていた、各国政府が開発パートナーなどとともに行っているアントレプレナーシップを中心とした育成への取り組みにある背景も理解できるのではないでしょうか?
まだ何も完全に定義されていないだけに、どのように若者が活躍していくのか、あるいは彼らの活躍を引き出す環境がどのように整備されていくのかなど、引き続き見ていくべきことがありそうです。
関連・参考記事:
- コラム – Vol. 1:「アフリカ」という見方
- AfCFTAは雇用と収入にどう影響する?【面白記事 Vol. 145: 2020年9月26日配信】
- AfCFTAとその経済効果とは?【面白記事 Vol. 97(2020年8月1日配信)】
- AfCFTAに関する新たなレポートをWEFが発表!【Pick-Up! アフリカ Vol. 94:2021年1月30日配信】
- AfCFTAの進捗は?【Pick-Up! アフリカ Vol. 165:2021年5月17日配信】
- Youth Month: Young Africans are key to continental free trade agreement
- 第6章 サハラ以南のアフリカにおける貧困削減と人間の安全保障(文中資料1)
- アフリカ変革の中心へ(文中資料2)
- Opportunities for Youth Employment and Entrepreneurship: Understanding the African Continental Free Trade Area
- Target: 30m youth jobs by 2030
- Three ways Africa’s Youth can Benefit from AfCFTA
- AfCFTA Youth Creative Competition
- ECA launches Programme of Work on Sport and Trade for the youth and people with disabilities
- アフリカの若者の労働問題と国際社会の関わり【Pick-Up! アフリカ Vol. 229:2021年10月25日配信】
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