内容と背景:
本日は、アフガンで唯一の全寮制女子校が、全生徒および職員約250名をルワンダへ避難させていたことについて紹介します。
以前投稿したこちらの記事では、今回の避難が起きた背景について説明しています。8月15日、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが大統領府を掌握し、首都カブールが制圧されました。1996-2001年の旧タリバン政権では、女性の教育は制限されていました。
タリバンでは「女子・女性が教育を受ける必要はない」といった社会的慣習があり、10歳程度から上の年齢の女の子は教育を受けることを禁じられていました。タリバン政権が崩壊する前の2001年には90万人の就学者のうち、女子生徒の割合は約12%しかありませんでした。女子教育はタリバンの下では難しかったのです。
このことを踏まえて、アフガンで唯一の全寮制女子校の生徒と教職員がルワンダへ避難していました。首都にある私立学校、アフガニスタン指導者学院(SOLA)の共同創立者であるシャバナ・バシージラシーフ氏は、「今後、生徒のために海外での学期を開始するつもりだ」と主張しています。
セーブ・ザ・チルドレンUKの前CEOであるケビン・ワトキンスは「今の課題は、構築してきた利益を守ることだ」と述べています。また、「(教育は)カブールの行政命令ではなく、タリバンと交渉し、挑戦してきた地元のコミュニティや教師、NGOの人々の静かな英雄的な行動によって勝ち取られ、守られました。」とも述べています。つまり、今までに作り上げてきた教育は、NGOや地元のコミュニティを通したタリバンとの協力によってなりたっていると主張しています。
それに対し、ユニセフはタリバンと協力しようとする考えは甘いと主張しています。以前、タリバンは元々女子教育を必要ないと考え、制限していたことから、協力して教育を維持しようとすることは楽観的な思考だとしています。
しかし、海外開発研究所のコーディネーターであるアシュリー・ジャクソンは、「教育において得られた利益を維持する唯一の方法は、タリバンと話すことです。ユニセフは楽観的だと言っていますが、そう考えなければならないのは、ほかに方法はないからです。」とタリバンと協調すべきという立場をとっています。ルワンダに移動した学校(SOLA)はタリバンとの協力が不可欠であるかもしれません。
さまざまな議論が繰り広げられる中、タリバン政権は女子教育を認める方針を示しています。しかし、参考記事であげているこの記事によると、タリバン政権は、国内での男女共学を禁止するとともに、今後、新たな服装規定を制定するとしています。タリバン占領前のアフガニスタンでは、女性の学生に服装規定はなく、男女共学でした。このことに対して、アブドゥル・バキ・ハッカーニ高等教育相は、「何の問題もない」と主張しています。
ここ数年で900万人まで増えた就学者に教育を行き届かせることはできるのでしょうか。また、男女の格差を埋めることはできるのでしょうか。現在では、学校に行けない子どもは370万人いて、その6割が女子です。また、15歳以上の成人で読み書きができない人は1200万人以上いますが、6割が女性です。成人の識字率は全体で43%ですが、女性に限れば約30%と非常に低いのが現状です。
このように、タリバンに制圧されたアフガンでは、女子教育がスムーズに行われるかどうかは定かではありません。ルワンダに避難した生徒や教師がルワンダからアフガンに戻るためには、タリバンとの協力が必須となると考えられますが、協力はおろか、今後女性が自由に教育を受けられるかも不明なままです。この先も、タリバン政権の女子教育に対する姿勢を追っていく必要があります。
関連・参考記事:
1.ウガンダ:アフガン難民を受け入れる【Pick-Up! アフリカ Vol. 208:2021年8月19日配信】-Link
2.タリバン、大学で男女共学を禁止 新たな服装規定やカリキュラムも,BBC NEWS-Link
3.アフガン唯一の全寮制女子校、全生徒・教職員がルワンダに移動,CNN-Link
4.タリバンの主張支える社会的背景 「女に教育はいらない」と言う人々,朝日新聞DEGITAL-Link
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