1年間で1000万トンの食品廃棄が発生する南アフリカ

South Africa wastes 10 million tons of food a year

記事リンク:https://mg.co.za/environment/2021-08-21-south-africa-wastes-10-million-tons-of-food-a-year/

内容と背景:

全世界の人々の需要を満たすためには、食料生産量を2050年までにさらに70%増やさなければいけないといわれているように、食料の増産と安定的な供給が今後世界的に重要な課題になっています。ですが、FAO(国際連合食糧農業機関)によると、人間が消費するために生産される食料のおよそ3分の1が毎年廃棄されているのが現状です。日本も例外ではなく、毎年612万トンもの食料が廃棄されています。

今回ピックアップいたしました記事では、南アフリカにおける食品ロスや食品廃棄について紹介されています。

科学産業研究評議会(CSIR: Council for Scientific and Industrial Research)の主任研究員であるOelofse氏が主導する研究では、南アフリカでは年間約1030万トンの可食食品が捨てられてしまっていることが明らかになりました。この量は南アフリカの食料生産量の34%程度に相当しますが、同国は食料の純輸出国(=輸出額が輸入額を超過している国)であるため、損失と廃棄物は食料供給量の45%ほどに相当します。食品廃棄は特に都市部で深刻であり、ヨハネスブルクでは平均して1人あたり年間12kgの食品を捨てていることになるようです。

それらの廃棄物の68%は生産の初期段階で、19%は収穫後の管理と貯蔵中に、49%は加工と包装中に発生します。近年では消費段階での食品廃棄も増加している模様です。最も廃棄されているのは穀類であり、全体のロスや廃棄の半分を占めています。そして、果物(19%)、牛乳(14%)、肉(9%)が続きます。

Oelofse氏は、食品廃棄は環境や気候や経済などに甚大な影響をもたらすとし、警鐘を鳴らしています。例えば、廃棄された食品が埋立地で分解されるとメタンが発生します。メタンは二酸化炭素よりも大気中の熱を閉じ込める効果の高い温室効果ガスであり、そのため、地球温暖化が加速し、気候変動をもたらすと指摘されています。また、水質汚染や大気汚染の可能性、埋め立て地の不足についても言及しています。

本日ご紹介しています記事では、こうしたリスクに対して努力している企業やその取り組みが複数取り上げられています。

そのうちの一つがShopriteです。Shopriteは、国連の持続可能な開発目標、いわゆるSDGsの、目標12-3(2030年までにお店や消費者レベルでの世界の食品廃棄を50%減らし、フードチェーンに沿って食品ロスを削減することを目的とした項目)に賛同し、南アフリカ消費財協会(Consumer Goods Council of South Africa)の食品ロス・食品廃棄自主協定に署名し中心的に活動している小売企業です。同協定が成立した2019年以降、他の署名企業と協力し、食品廃棄の防止と削減のために、地域の食品製造業者、流通業者、小売業者の持続可能なコミットメントを推進しています。

この企業では、データ分析を活用して食品ロスや食品廃棄の減少に取り組んでいます。お惣菜の販売においては、顧客の行動を分析し、人気がなく売れ残るような商品をメニューから外したことで、昨年度は11%の食品廃棄削減に成功していました。

また同社では、生じてしまった食品ロスを、毎日地元の共済組合等に寄付することで食品廃棄の発生を防いでいます。これにより、環境だけでなく飢餓の問題を緩和することも目指しているようです。

近年、南部アフリカでは、良好な気候によって例外的に南アフリカとザンビアとジンバブエでは穀物と家畜の生産が改善した一方で、南部アフリカ全体では長い乾期やサバクトビバッタの発生、COVID-19の影響により、食料と栄養の安全保障に関する不安が広がっています。南部アフリカ開発共同体SADC: Southern African Development Community)加盟国では、昨年より5.5%多いおよそ4760万人が食料と栄養のアクセスに苦心しているといいます(関連・参考記事3より)。こうした状況をみると、大量の食べられる食品が廃棄されることは非常に残念なことであり、食品ロスや食品廃棄の削減、近隣諸国への食料供給への取り組みがますます行われることに期待したいです。

そのためには、食品ロスや食品廃棄の一因である、生産品の状態を保ったまま保管・運搬する技術や、生産品に適した環境で販売するノウハウや設備の不十分さを解決するべく、サプライチェーンやコールドチェーンの改善、インフラの整備が不可欠となってくるでしょう。

関連・参考記事:

  1. (農林水産省) – Link
  2. Food waste prevention and management – Link
  3. Zim, Zambia, SA record maize surplus in SADC – Link
  4. コールドチェーン網の形成:ナイジェリア起業家へのインタビュー【Pick-Up! アフリカ Vol. 117:2021年2月26日配信】 – Link
  5. 農業バリューチェーンの強化を目指す”Farm to Market”アライアンスとは?【Pick-Up! アフリカ Vol. 75:2021年1月7日配信】 – Link
  6. アフリカ農業における課題点からみるコールドチェーン構築の必要性【面白記事 Vol. 108: 2020年8月14日配信】 – Link
  7. 東アフリカでのコールドチェーン構築の動き;ルワンダのGET ITとCold Solutions Kenyaの最新動向【面白記事 Vol. 93: 2020年7月28日配信】 – Link
  8. 食料の安全保障維持に向けたアフリカ諸国政府とイスラエル企業らの連携【Pick-Up! アフリカ Vol. 2: 2020年10月6日配信】 – Link
  9. 南アフリカSDGs、水分野の目標を達成できない見通し?【Pick-Up! アフリカ Vol. 144:2021年4月2日配信】 – Link
  10. 気候変動:アフリカ大陸全体としての取り組み方は?【Pick-Up! アフリカ Vol. 179:2021年6月14日配信】 – Link
  11. ルワンダでのコールドチェーン開発:英国からの後押しを受ける【Pick-Up! アフリカ Vol. 138:2021年3月26日配信】 – Link
ご相談・お問い合わせ

アフリカ・ルワンダへのビジネス進出をご検討の際は、当サイトの運営に関わっているレックスバート・コミュニケーションズ株式会社までご相談・お問い合わせください。


コメントを残す