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記事:オリンピックの富の格差が拡大することへの恐れ、太平洋諸国のアスリート東京オリンピックへの準備の苦悩より
Fears of a widening Olympic wealth gap as Pacific countries struggle to prepare athletes for Tokyo
内容と背景:
新型コロナウイルスのパンデミックによって1年延期された東京オリンピックが、7月23日より開催されています。今年は全206カ国11,656名が出場し、33競技339種目が実施されるということです。アフリカ大陸からも多数のチームが出場しています。
一つ一つの競技はさることながら、今年の見所は、女性アスリートや難民選手団の活躍など、大会全体のダイバーシティーにもあるようです。
ジェンダーバランス
UN WOMENの記事によると、今回のオリンピックでは、参加するアスリートの49%が女性となり、史上最もジェンダーバランスの取れた大会になるということが示されています。206カ国すべてのチームには、少なくとも1人の女性と1人の男性のアスリート代表で構成されています。これはスポーツにおけるジェンダーバランスのランドマークであり、世界中の女性のエンパワメントを高める強力な手段として位置付けられているようです。(関連記事1)
難民選手団
その他に、難民選手団の存在も注目されています。難民選手団は、紛争や迫害により故郷を追われた難民アスリートによって構成されています。2016年のリオ大会から初めて結成され、IOCのスポンサーから資金提供を受けて、今年は29名のアスリートが出場しました。(そのうち、アフリカからの難民アスリートは10名。)この難民選手団の存在は、8240万人の世界中の難民たちの存在を国際社会に示し、同じように故郷を追われた人々に勇気を与えています。(関連記事2.3.4.)
さて、このように選手のダイバーシティーにも富んだ東京オリンピックですが、本日は、競技というトピックからは少し外れて、オリンピックから見る貧富の格差について懸念を示した記事をピックアップしました。
選手数とGDP (GNI) の関係
まず、オリンピックの派遣選手の数について言及している記事(関連記事5)によると、参加国の中で最多の選手を派遣している国はアメリカで657名、続いて開催国である日本の615名となっています。一方で、最低数を示した国は13カ国で、アンドラ、バミューダ、ブルネイ、中央アフリカ共和国、ドミニカ、レソト、マーシャル諸島、モーリタニア、ナウル、セントクリストファーネイビス、ソマリア、南スーダン、ツバルの国々が2名の選手を派遣しています。
世界銀行の定義による分類を見てみると(関連記事6)、派遣している選手の数はその国のGNIと必ずしも相関があるわけではないということがわかりました。例えば、上記のアンドラやバミューダが高所得国として分類されている一方で、南スーダンやソマリアなどは低所得国として分類されるなど、派遣選手数は同じでも国によって所得には大きな違いが見られています。
メダルの数と貧富の差
一方で、本日ご紹介している記事によると、メダルの数については、国の所得と人口に比例するということが示されていました。2016年のリオデジャネイロ大会のメダル集計表のトップは高所得国がマークしていることに対し、太平洋諸国はほんの一握りのオリンピックメダルしか獲得していないということが言及されています。(関連記事7)
その背景として、低所得国となる国々の多くはナショナルスポーツチームや専門のトレーニング施設に専念するためのリソースがないということが原因の一つとして挙げられます。
代わりに、低所得国出身のアスリートは、オーストラリア、ニュージーランド、フランスなどの国からのサポートを利用し、国際トーナメントの資格を得たり、エリート施設にアクセスしたりしていました。
新型コロナウイルスによる影響
しかし、COVID-19のパンデミックにより、過去1年間にこれらの国への渡航に制限がかかり、多くのオリンピック選手候補者は、国内の整備の行き届いていないセンターでのトレーニングを余儀なくされました。
さらにこの記事によると、国際オリンピック委員会は、COVID-19の影響に対処し、参加組織が「スポーツ、活動、アスリートへの支援を継続」できるようにするために、最大1億5,000万ドル(2億100万ドル)の援助パッケージを発表しました。しかし、COVID-19パンデミックが発展途上国に与える影響が懸念されているため、今年の大会では、より豊かな国とより貧しい国の間のギャップがさらに広がるのではないかという懸念があると言われています。
今後の展望
2016年に同様のテーマで書かれた興味深い記事(関連記事8)では、アフリカのトレーニング施設が慢性的に不足しているということが示されています。その上で、すべての国が準備の面で平等なオリンピックを開催するためには、所得に応じて2層(高所得国・低所得)のオリンピック大会を開催することが必要であるというユニークな意見が書かれていました。
そのほかに、国連がアフリカ大陸にオリンピック訓練施設を建設する必要があるのではないかということも同様に示しています。
2層のオリンピック大会は、あまり現実的ではないかと思う一方で、トレーニング施設の不足が大きな問題であることは確かです。
女性の選手活躍によるジェンダー平等の実現や、難民選手団の活躍など、オリンピックはスポーツの祭典を通して国際社会の課題に向き合っているということがわかります。オリンピック大会そのものが、回を追うごとに国際社会の潮流に合わせてアップグレードしている印象を受けました。
一方で、このコロナ禍で高所得国と低所得国のギャップが開くことが予測されています。東京オリンピックでは、国によるメダルの獲得数も注目した上で、IOCやその他の国際団体が低所得国のアスリート養成に対して、具体的にどのようなアプローチをするのか、引き続き注目していきたいと思います。
関連・参考記事:
- Women in sport are changing the game – Link
- These are the refugee athletes at the Tokyo Olympics – Link
- Ten Africans on Olympic Refugee Team for summer Tokyo 2020 Games – Link
- 2021年夏 来日・難民選手団 関連情報 UNHCR – Link
- How many athletes participate in the Olympics, and other key numbers from the Games – Link
- World Bank Country and Lending Groups – Link
- FULL OLYMPIC MEDAL TALLY Rio 2016 – Link
- Olympic wealth gap leaves Africa behind – Link
- Africa’s medal hopes for Tokyo Olympics in athletics, basketball, tennis and more – Link
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