アフリカが独自に医薬品製造を開始する日は近い?

How Africa could soon start making its own medicines

記事リンク:

COVID-19: Why Africa must strengthen its own drug supply | World Economic Forum (weforum.org)

内容と背景:

2020年12月にイギリスが新型コロナウイルスのワクチン接種を大々的に開始してから、ワクチン接種の動きは世界中に見られています。規制緩和がなされる国や地域があらわれる中、アフリカでワクチンの2回接種を終えた人々は全体の人口の1%にも満たないなど、ワクチン接種はいまだすすんでいないという現状があります。

下の図は、1回でもワクチンを接種した人びとの割合を示しています。(2021年6月29日時点)

COVID-19のパンデミックが起こる以前から、アフリカ大陸における医薬品不足は深刻な問題となっていました。WHOによると、従来よりアフリカの人口の約半分にあたる人々が日常の必要不可欠な医薬品をも入手することができない状況にあり、貧困層や女性や子どもたちが特に大きなダメージを受けてきたとのことです。

そして、今回のCOVID-19のパンデミックにより、アフリカの医療インフラの脆弱さが露呈しました。これは、アフリカの国の多くが医療物資の大多数を大陸外からの輸入に頼ってきたことに起因します。

サブサハラアフリカでは、消費される医薬品の70~90%を輸入に依存しています。こうした過度な輸入依存は、外部の政治や経済などの変化の影響を輸入国に直にもたらします。今日のCOVID-19のパンデミックのなかでは、医薬品を製造販売しているいくつもの国が医薬品の国外輸出を制限したために、アフリカ大陸への医薬品流通量が一気に減少しました。これにより、医薬品のコストが上昇し、医薬品不足も多くの地域でみられています。こうして、パンデミックは輸入に頼ってきたアフリカ大陸全土に危機をもたらし、また、サプライチェーンの混乱を明るみにしました。

サプライチェーンが機能しなくなることで、HIV/AIDSマラリア結核、経口避妊薬などの治療薬や、妊産婦や新生児、精神疾患者やその他の病気を抱える人びとへの治療を十分に供給することができなくなっていしまいます。マラリアと結核とHIV/AIDSの3つの病気に関しては、医薬品や必要なケアの欠如により、パンデミックがなければ救えた100万人ほどの命が失われる可能性があると言われています。COVID-19がもたらしたサプライチェーンの崩壊はCOVID-19それ自体が直接与える影響よりもアフリカの製薬や医療分野に影響を与えた、という声もあがっています。

こうした現状に対し、多くの医療従事者や地域組織がアフリカ国内に医薬品製造のハブを構築することを提唱し、各国政府もジェネリック医薬品を製造する民間の製薬会社や、医薬品の主要成分である原薬を製造する会社の現地生産を後押しすることを検討し始めています。

アフリカの多くの国が医薬品を輸入していると先でお伝えしたように、国内や地域で医薬品を製造している会社はサブサハラアフリカにはほとんどありません。マッキンゼーの2019年のレポートでは、アフリカ大陸中にある薬品メーカーはわずか375社で、その多くは北アフリカに位置し、数少ないサブサハラアフリカの薬品メーカーも9か国に集中している、ということが明らかになっています。

今回ご紹介する記事では、そのような輸入依存や産業集中を緩和し、原薬と医薬品を現地生産することでアフリカ全土の保健医療システムの強化をもたらすことを目指す取り組みが取り上げられていました。

アフリカの国々がイニシアティブをとって行っている取り組みには、2005年にアフリカ連合開発機構によってつくられたPMPA(: The Pharmaceutical Manufacturing Plan for Africa=アフリカ向け医薬品製造計画)や、The African Medicines Agency(=アフリカ医薬品庁)や、The African Vaccine Regulatory Forum(=アフリカワクチン規制フォーラム)があげられます。これらは、現地での医薬品製造を促進し、また、公衆衛生を向上させるビジネスプランを広めることに努めています。

開発途上国の民間セクター開発を支援する国際的な機関であるIFC(: International Finance Corporation=国際金融公社)もそれらの取り組みを支持し、融資を伴う環境整備のサポートを行っています。

上記の取り組みは投資にもフォーカスをあてており、IFCは、投資家たちの信頼を得るためには医薬品に基準を設ける必要があることから、医薬品の規制改革の重要性についても述べています。

医療の改善には長間にわたる試みが必要です。現状に対しても急ぎの対策が必要ですが、パンデミックにおけるコロナワクチンの普及への対応に関して、これまでにもPick-Up! アフリカではいくつかご紹介してきました。例えば、エチオピア航空が中国の民間企業と連携してワクチンの輸送手段と保管施設を新たに導入したという記事(Link)や、ルワンダ国内でのコールドチェーンの改善に関する記事(Link)、そして最近には、ルワンダ国内でワクチンを製造する取り組みに関する記事(Link)を取り扱ってきました。アフリカにおけるコロナ禍での医療変容に興味がある方は、ぜひご覧ください!

医薬品の製造には、確実な技術とそれを伝授する教育も欠かすことができません。また、1つの医薬品の製造するにも莫大なコストと時間がかかります。そのため、すぐに現地生産を広めることはできませんが、アフリカ各国の主体的な取り組みやそれに伴う様々なファクターからの支援により、医療技術や医療制度がますます発達することが予想されます。近い将来、私たちもアフリカで製造された医薬品を用いる日が来るのでしょうか。

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参考:関連記事

  1. Africa: COVID-19 could cause a million excess deaths from these 3 diseases – Link
  2. Our World in Data – Link
  3. Covid-19 Africa: What is happening with vaccine supplies? – Link
  4. ルワンダでコロナワクチンを製造?【Pick-Up! アフリカ Vol. 163:2021年5月13日配信】 – Link
  5. コロナワクチン普及に向けたエチオピア航空とケニア航空の取り組み【Pick-Up! アフリカ Vol. 58 :2020年12月11日配信】- Link
  6. コロナワクチン普及に向けたルワンダでの動き【Pick-Up! アフリカ Vol. 64:2020年12月18日配信】 – Link
  7. ルワンダでのコールドチェーン開発:英国からの後押しを受ける【Pick-Up! アフリカ Vol. 138:2021年3月26日配信】 – Link
  8. パンデミックとアフリカのイノベーション【Pick-Up! アフリカ Vol. 154:2021年4月21日配信】 – Link

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