コロナ禍成長するアフリカのスタートアップデジタルエコノミー

英題:Growing Africa’s start-up digital economy in a pandemic

記事リンク:https://www.itweb.co.za/content/Pero3qZx8VV7Qb6m

内容と背景:

こちらの記事ではコロナ環境下でアフリカのスタートアップ企業が検査キットや、感染者追跡アプリ、そしてイギリスの会社とコロナに関する研究を行った話題などを引き合いに出し、イノベーションが強く前進しているということをお伝えしました。

また、こちらの2020年のアフリカのスタートアップ業界への投資状況に関しての記事では、アフリカのスタートアップ業界への投資額こそは2019年と比較し少なくなったものの、投資を受けたスタータップ企業の数、ディールの数、そしてそれらのスタートアップの出身国の数が増えたことに触れ、スタートアップ投資の裾の尾が広がっていることがレポートなどから見受けられました。

さて、今回ご紹介する記事では、CG Consulting社で中東アフリカのセールス&マーケティング部長である、Louise Robinson氏へのインタビューなどを紹介しながらコロナ禍でのスタートアップ企業を取り巻く状況に関して書かれています。記事では、Fintechや医療系スタートアップがNPOなどからのサポートを受けつつ成長していることを例に挙げ、アフリカの様々な国でコロナという負の要素を乗り越え、世界からの興味を惹きつけているとしています。特に、コロナがもたらした変化として、それまでビジネス中心だった見方が、人道主義中心的なものになったとしています。

そして、これを支えているのが、技術の普及がとても安価で、そして早く起きているとも、記事では紹介しています。

その例として、アフリカ大陸の雇用率の70%をインフォーマルセクターの中小企業が占めていることに触れ、ガーナのスタートアップ企業がCatalysts Fundから12万ドル(約1200万円)の資金を得てこれらの中小企業に対して対策を提供したことに触れています。またアフリカ各国において農業従事者が多いことにも触れ、ウガンダとナイジェリア、ザンビア、マラウィでデジタルソリューションを提供し、農業分野に好影響をもたらしているスタートアップ企業のソリューションも共有されています。

ウガンダのスタートアップ企業、Bringo Freshは農作物のサプライチェーンに目を向け、作物が市場に着く前に様々な理由で腐敗したり、傷物になったりするにもかかわらず、それらの質に合わない価格での売買が行われているとし、これらの作物が流通するe-コマースプラットフォームを提供していると紹介しています。

また、ナイジェリアからは、農村部に住んでいると言われる約2億人の人口のうち49%が農業に従事しているおり、同国の経済に大きなインパクトを持っている中で、畜産農家とその分野に出資したい人々を繋げるクラウドファンディングプラットフォームを提供しているCashCow NG社を紹介されています。この分野では小規模農家が多いことから、彼らは自らのビジネスを大きくするための資金へのアクセスも難しいという課題があり、それに対し、小口的に投資を得られる方法を農家に提案しているのがみて取れます。

ザンビアの場合も農家のファイナンスへのアクセスが困難な点、そしてそれによって、生産効率などを高める農業機器を手に入れられないことを解決しようとしているRent To Own社の取り組みが共有されています。彼らは、作業効率を高める機器へのアクセスを可能とする貸付だけでなく、農業関連のトレーニングも提供しているようです。

さらにはマラウィの場合も共有されていますが、こちらは、マラウィ外に住むマラウィのディアスポラ向けのソリューションである、SmartDiasporaというソリューションが紹介されています。こちらは、ディアスポラが地元経済、特に不動産への投資を促進するプラットフォームとして、ブローカーらが地元にいないディアスポラの代わりに不動産関連の交渉を行ってくれます。現在はマラウィでしかできていない同サービスも、今後はケニアへと事業拡大するようです。

教育の分野での取り組みも共有されており、ジンバブエの例では、Simba Educationという教育系のソリューションが紹介されています。このソリューションは学生でなく、教育者をターゲットとしており、特に農村部などインターネット接続は乏しい地域でも使えるものになっています。教師が質の高い教育を提供できるよう様々なツールが利用できるというものです。このプラットフォーム上のツールを活用することで、学生の学習の進捗も図ることができるようで、教師にとっては自らの質を高めることにもつながるようです。

ここで共有しているソリューションにみられるように、社会性の強ういものが大きいことが想像できると思いますが、これらのスタートアップ企業は世界銀行やWHO、そしてその他にはNGOなどからのインパクト投資による資金を得てそれぞれのソリューションを提供しているようです。こちらの記事でも紹介していますが、より社会的な課題への投資の必要性をより理解している人道的活動をしている機関からの投資の増加は昨年予測されていました。実際、グローバル・インパクト投資ネットワーク(Globan Impact Inveting Network: GIIN)の発行したこちらのレポートからもわかるように、2015年から2019年までサブサハラアフリカ地域で行われたインパクト投資は増加しており、年次7%の成長をしているようです。そして、今後も同様の投資はさらに増加していくだろうともレポートの中では共有されています。その背景にはSDGsの存在があるようで、特に明白化された投資の必要性や、その投資の効果の計測方法(SDGs目標で掲げられている数値的目標が達成されたのか)なども、このような投資を行う投資家や、投資機関の投資を後押ししているようです。

しかし、こちらの記事では、インパクト投資の資金がその投資が向かう国や地域出身者よりも、エクスパットと表現される、その国への移住者に与えられていることに触れ、一つの問題となっていることに触れています。それによって、実際に必要とされている投資と、実際に行われる投資とにギャップがあるとしています。ローカルの投資家の数の少なさなどもこの傾向とともに見られるとしています。

こちらの記事や、Pick-up! アフリカの前身の面白記事 Vol. 148でも触れましたように、コロナの影響により、渡航が難しくなり、これまで以上にDue diligenceが困難になったことなども、あまりローカル市場に関する知識を取得しきれていない投資家にとってローカルの起業家よりも、よりバックグラウンドや共通認識などを共有しているかもしれない移住者に対して投資が行きやすい状況を生み出しているとも共有しています。

またこれは、現在投資からが例えば投資額などにおいてローカルの事業体が取り扱うことのできないチケットサイズや、起業家が考えるインパクトを実現するに必要と思う金額よりも大きなものしか提供できないということもあるようで、ローカルの理解が加わることで、そしてコロナ禍がもたらした様々な困難を乗り越えた新しいアフリカ市場との向き合い方などの取り入れが、コロナ後のインパクト投資のあり方に変化をもたらすだろうとしています。

そして、いくつかの記事でも共有されているように、パンデミックが様々な意味で投資家と起業家の関係性を変えたことから、よりローカルニーズに根ざした投資の提供などが今後は期待されます。


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