アフリカ:教員が若者のメンタルヘルスを助ける

Africa: Use Teachers To Help Africa’s Young People With Their Mental Health

記事リンク:https://allafrica.com/stories/202105110240.html

内容と背景:

本日はアフリカの若者のメンタルヘルスに関する話題について書かれた記事をご紹介します。

昨年発表された調査 によると、アフリカの10代の若者の5人に1人が自殺を考えたことがあるという結果が示されています。他の調査結果によると ナイジェリアの若者は 12 %(10人に1人)が自殺を試みたというデータが出ているようです。

WHOが提唱する「メンタルヘルスアクションプラン2013-2020(Mental Health ActionPlan 2013-2020)」では、WHOの加盟国が2020年までに自殺死亡率を10%減少させることを世界全体の目標に掲げました。No health without mental health(メ ンタルヘルスなしに健康なし)”を原則に、加盟国に対して、「LGBTQの人々、若者、その他、地域の状況に応じて、全ての年齢における脆弱性の高い集団など、自殺の危険性が高い集団を特に注意し、自殺対策のための包括的な国の戦略を開発・実施すること」を提案するとともに、WHOとしては「自殺の危険性が高い集団を特に注意し、各国が自殺対策プログラムを強化する際に支援を提供する」と示されています。

以前から、若者のメンタルヘルスを取り巻く状況には、WHOを中心に自殺対策プログラム等で世界的に様々なアプローチが取られていたということが理解できます。

そこで今回ご紹介する記事では、アフリカの若者の自殺志願者の割合が高い問題の背景に目を向けた時、精神科医が非常に少ないという問題が一因として考えられるということが示されています。

約2億人のナイジェリアの人口に対し、わずか250名のみが精神科医として従事しています。教員は約200万人が登録されていることから、その課題を解決するために、学校教育現場で教師がカウンセラー的役割を担うことができるのではないかということが考えられているようです。

そこでこの記事では、WHOの提唱するメンタルヘルスギャップアクションプログラム(mhGAP)「Intervention Guide for mental,neurological and substance use disorders in non-specialized health settings」導入についての展望が書かれています。mhGAPは、精神科医が少ない地域の治療格差を埋めるために、教師などのメンタルヘルス分野の非専門家に対してガイドラインを提供し、学校などのリソースの少ない環境でメンタルヘルス支援に介入できるようにするために、2008年から行われているプログラムです。

若者が多く集まる学校などの環境では独自のトレーニングを積んだ教員が、メンタルヘルスの支援に介入することで、セーフティーネットを拡大することができるということについて利点があるということです。

過去にPick-Up!アフリカでご紹介した内容では、コロナ禍においてアフリカ各国で自殺志願者数やメンタルヘルスケアを必要とする人々増えたという現状をお伝えしていました。(アフリカのヘルスケア- HIV検査プロジェクトとコロナ渦メンタルヘルスの課題【面白記事 Vol. 86: 2020年7月16日配信】

その際には南アフリカで相談電話件数が増えているなど、より迅速な対応が迫られているという状況が示されていました。

今回の記事では、利用できるリソースが少ない状況の中で、若者と密接に関わる教員が国際的なガイドラインの元、若者のメンタルヘルスを支援するという仕組みが構築されているということについて示されていました。専門的な知識・技術を有する精神科医を育成することと並行して、限りあるリソースの中で国民の健康や福祉を守るために、非専門家へのアプローチも同時に行われていることが理解できます。

コロナ禍において若者のメンタルヘルスの課題はより深刻化しているということが様々なメディアで報じられています。より多くの若者にとって、必要な時に適切な支援を受けられる環境を整えておくことが先決であると感じました。

関連・参考記事:

  1. Mental health action plan 2013 – 2020 – Link
  2. メンタルヘルス アクションプラン 2013-2020 – Link
  3. Shortage of psychiatrists: A barrier to effective mental health-care delivery in Nigeria – Link
  4. 精神保健専門家のいない保健医療の場における 精神・神経・物質使用障害のためのmhGAP介入ガイド – Link
  5. Mental Health Gap Action Programme (mhGAP) – Link
  6. コロナ禍でのケニア難民キャンプ、メンタルヘルスケアの課題【Pick-Up! アフリカ Vol. 7 (投稿:2020年10月12日)】- Link
  7. アフリカのヘルスケア- HIV検査プロジェクトとコロナ渦メンタルヘルスの課題【面白記事 Vol. 86: 2020年7月16日配信】- Link
  8. 南アフリカ:2020年のヘルスレビュー、障害のある人々の医療に焦点を当てる(内容解説)【Pick-Up! アフリカ Vol. 98:2021年2月4日配信】- Link

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