こんにちは!Pick-Up! アフリカです。
今回は過去記事でご紹介したアフリカの昆虫食産業において活躍しているケニアの企業について取り上げます。
目次
- 持続可能な飼料提供に挑む「InsectiPro」
- InsectiProのコオロギ養殖挑戦
- 世界進出への課題
- 日本企業の昆虫飼料市場進出
- 終わりに
持続可能な飼料提供に挑む「InsectiPro」
サバクトビバッタ大量発生による被害(詳しくは過去記事へ!)など、昆虫との向き合い方に苦しむアフリカですが、その昆虫を食料・飼料として活用し持続可能なビジネスモデルを築くケニア企業が存在します。
その名も「InsectiPro」。
ブラックソルジャーフライとコオロギの養殖事業を展開しています。
創業者のTalash Huijbers氏は当初故郷のケニアでティラピアを養殖する事業を計画していましたが、タンパク資源が不足しているケニアでは魚飼料が高価で生産コストの6〜8割を占めてしまっていたとのことです…
そこで代替案として可能性を見出したのが昆虫飼料。
飼料用に養殖しているのはブラックソルジャーフライ(Black Soldier Fly、以後BSF)、アメリカミズアブとも呼ばれるアブの一種です。
BSFには以下5点の魅力があると報告されています。(InsectiPro ホームページ参照)
★高栄養価
BSFの構成要素の45%がタンパク質だそうです。これは高タンパク食品として有名な鶏むね肉の25%に比べても驚異的な数値です!さらに必須アミノ酸、動物飼料の重要な構成要素である脂肪も 20% 以上含まれているそうです。
★食品廃棄物の利用
BSFの餌は地域で発生した食品廃棄物だそうです。食品廃棄物はゴミ捨て場から80%を無料で引き取っており、1kgのBSFが約6kgの食品廃棄物を消費し、その糞が高品質な肥料として利用されるそうです。これにより餌のコスト、さらに廃棄物の焼却によるCO₂排出まで抑えることができ、環境への負担を軽減しているそうです。
★早い成長スピード
BSF孵化から飼料として出荷される蛹の状態になるまでの期間はわずか17日間だそうです!
★アフリカ気候へのマッチ
アフリカにはBSFの養殖に適した温暖な気候があり、電気・輸送コストを抑えて国内生産することができるそうです。
★安全性
BSFは食物中の細菌を分解するため、衛生的であると考えられているそうです。また、BSFは人を噛んだり刺したりすることがなく、病気を媒介する可能性が極めて低くなっていると伝えられています。
このように食品廃棄物を活用して、持続可能なアップサイクルで高品質の昆虫飼料を生産しているInsectiPro。
現在(元記事作成時2023/1/18時点)では養殖したBSFL、BSFLが生み出した肥料で合計1日1トン、1000〜2000$(約15〜30万円)の製品を生産しているそう!
InsectiProのコオロギ養殖挑戦
InsectiProは昆虫飼料の養殖に続いて昆虫食としてのコオロギの養殖にも挑戦を始めているそうです。
コオロギを乾燥させてパウダー状にしたもののタンパク質含有量は最大で脅威の73%!!人間が一日に必要なタンパク質量が約20gのため、一握りのコオロギで必要量を賄えると言われています。他にも鉄、亜鉛やビタミンB12などの栄養素を含んでいるそうです。(InsectiPro ホームページ参照)
コオロギも繁殖力と成長スピードに強みがあるそうです。メスのコオロギは2-3週間の間に300-400個の卵を産み、5週間後に収穫が可能になるそうです。
InsectiProはこのコオロギをスナック菓子、プロテイン粉末の2種類の製品で販売中。価格はスナック菓子が20gで約116円、粉末は500gで約2010円となっています。(国内販売のみ)
世界進出への課題
アフリカでは昆虫食が文化として根付いていますが、昆虫養殖産業は歴史が浅く制度整備が追い付いていない状況です。
ヨーロッパでは欧州食品安全機関が2021年1月に、乾燥イエロー・ミルワームに対して昆虫食分野ではじめて販売認可を下しましたが、流通拡大の道はまだ始まったばかりのようです。(参考記事)
InsectiProも製品輸出の要請を受けていますが、食品としての安全性に関する国際的な基準が定まっていないため実施できていないそうです。
現在は周辺地域市場に焦点を向け、ウガンダとルワンダへの進出を計画しているそうです!(ルワンダについて詳しくはこちらから!)
日本企業の昆虫飼料・昆虫食市場進出
昆虫飼料や昆虫食業界への注目度は日本でも年々高まっています。
長崎大学と同大学卒業生が起業した長崎市の飼料製造会社「Booon」は協力して養殖魚用昆虫飼料の開発に取り組んでいるそうです。現在日本の養殖魚用飼料は輸入されたカタクチイワシなどの魚粉が主流で、年々価格が高騰して水産業を圧迫しています。「Booon」は飼育動物用の餌として広く用いられるミルワームを代替たんぱく質として活用し、国内での安定生産を目指しているそうです。(参考記事)
住友商事は2023年4月にマレーシアで昆虫飼料を製造するスタートアップ企業「Nutrition Technologie」と戦略ビジネスパートナーシップを締結しました。シンガポールの温暖な気候を生かしてBSFを養殖し、日本国内で養殖魚用飼料としての流通を目指しています。さらに、将来的には製造工程で生成されるオイルを利用した化粧品・化学品の開発にも取り組む予定で、2030年までに3万トンの取り扱いを目標に掲げています。(参考記事)
身近なところでは無印良品が2020年から「コオロギせんべい」、「コオロギチョコ」を販売しています。世界人口の増加による食糧危機、たんぱく質供給不足問題に取り組むため、飼育における環境負担が少なく、成長スピードの早い高たんぱくなコオロギを商品化しているそうです。(参考記事)
終わりに
いかがだったでしょうか?
今後日本企業と「InsectiPro」のようなアフリカのスタートアップ企業が協力して昆虫飼料・昆虫食事業を行っていくのか注目です!
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