こんにちは!Pick-Up!アフリカです。

アフリカでは、児童労働が深刻な社会問題として長年根強く残っています。

過去にも何度かこの問題を取り上げてきましたが、残念ながら状況は改善どころか、むしろ悪化の一途を辿っているのが現状です。

2020年のサブサハラアフリカでは、8660万人もの子どもたち(7〜15歳)が児童労働に従事しており、その数は2016年と比べても1600万人以上増加しているというデータがあります。参照

児童労働はなぜ起こるのか

参考:https://www.unicef.org/ethiopia/media/3776/file/Report%20.pdf

そもそもなぜ児童労働は行われているのでしょうか?

Unicefが発表している主な児童労働の原因は以下の5つです。

1.貧困・社会経済学状況的理由

…貧しい家庭の場合、子供が働かなければいけなくなります。

2.家庭環境に健康や経済面で悪影響をもたらす出来事の発生

…親が病気になったり、家庭の経済状況に何らかの悪影響が生じた場合、子供が働かざるを得なくなるケースがあります。

3.十分借入を行えない状況

…貧しい家庭では銀行からお金を借りるほどの信用がないことが多く、子供が働かなければならなくなるケースがあります。

4.文化的に子供たちを財産として考える文化的価値観

…一部の地域では、一部の地域では、子どもを家族の労働力として考えており、教育よりも労働を優先する価値観が根強く残っています。

5.孤児化、暴力、移民

…親がいない、児童虐待を経験した、紛争や自然災害などで故郷を離れることを強いられた子供達は児童労働に走る可能性があります。

さまざまな要因が世界中で児童労働を助長しています。特にアフリカ大陸では、多くの国で児童労働が深刻な問題となっています。以下では、アフリカ各国の児童労働の割合をランキング順でご紹介します。

アフリカの児童労働の割合が高い国トップ20

ランキングはUnicefが発表しているChild Labour Statistisのデータをもとにしています。

注1:児童労働としてカウントされる条件は以下参照

5~11歳の子どもたち:有償の活動に週1時間以上、および/または無報酬の労働(家事など)に週21時間以上従事している場合

12~14歳の子どもたち:有償の活動に週14時間以上従事し、および/または無報酬の家事サービスに週21時間以上従事している場合

15~17歳までの子どもたち:経済活動に週43時間以上従事している場合

注2:それぞれの国でデータが収集された時期はバラバラなので、最新の状況とは異なる可能性があります

注3:国によっては特定の地域の割合のみを表すデータとなっています

国名(参考データ年)合計割合
1位🥇 エチオピア(2015)45%(男51%、女39%)
2位🥈ブルキナファソ(2021)42%(男43%、女40%)
3位🥉チャド(2019)39%(男39%、女40%)
3位カメルーン(2014)39%(男40%、女38%)
3位トーゴ(2017)39%(男38%、女39%)
6位マダガスカル(2018)37%(男38%、女35%)
7位ニジェール(2012)34%(男34%、女35%)
8位ナイジェリア(2021)32%(男33%、女30%)
9位ブルンジ(2016)31%(男30%、女32%)
10位ジンバブエ(2019)28%(男33%、女22%)
10位リベリア(2019)28%(男26%、女29%)
12位中央アフリカ(2018)27%(男25%、女29%)
13位シエラレオネ(2017)25%(男26%、女25%)
13位タンザニア(2014)25%(男26%、女24%)
15位ギニア(2016)24%(男24%、女25%)
16位ザンビア(2012)23%(男23%、女23%)
16位セネガル(2015)23%(男27%、女19%)
16位マリ(2020)23%(男23%、女23%)
19位ガーナ(2017)20%(男19%、女22%)
19位ベナン(2021)20%(男20%、女19%)

Top20は西アフリカが一番多く11ヶ国、続いて東アフリカが4ヶ国中央アフリカが3ヶ国南アフリカが2ヶ国となりました。北アフリカの国はTop20にはランクインしていません。

国によって児童労働に従事する男女の割合は数%異なり、男子が多い国と女子が多い国があります。そもそも男女で仕事内容が異なり、男子は主に建設業、鉱業、製造業に関わっているのに対し、女子は家事のようなサービス業に携わっているそうです。(参考

エチオピア(1位)

参考:file:///C:/Users/81807/Downloads/wcms_101161.pdf

1位にランクインしているエチオピアでは、子どもの約半数にあたる45%(男子51%、女子39%)が児童労働に従事しており、非常に深刻な状況です。

エチオピアの児童労働問題は、貧困という根深い問題に深く結びついています。

下のグラフは貧困と児童労働の関係を表しています。Wealth quintileとは、ある集団(国、地域など)の総資産を5等分し、それぞれを五分位としたときの各層のことを指します。

それぞれ1〜5は以下のように表されます。

  • 第1クインタイル: 最も資産が少ない20%の人々
  • 第2クインタイル: 2番目に資産が少ない20%の人々
  • 第3クインタイル: 中間の20%の人々
  • 第4クインタイル: 4番目に資産が多い20%の人々
  • 第5クインタイル: 最も資産が多い20%の人々(富裕層)

Expenditure quintileはWealth quintileの支出版です。Wealth quintileが「どれだけ持っているか」に着目するのに対し、Expenditure quintileは「どれだけ使っているか」に着目しています。

参考:CHILD LABOUR ABALYSIS IN ETHIOPIA

左のグラフによると、資産が少ない世帯の方が子供が児童労働に従事している割合が高く、資産が多い世帯の子供たちは児童労働に従事していないことがわかります。

右のグラフによると、支出が一番多い第5クインタイルにおける児童労働の割合が突出して低いものの、その他第1〜4クインタイルでは児童労働の割合が高いことが見受けられます。しかし、これにはからくりが存在します。第1~4クインタイルに属する人々の支出は大幅に変化しないのに対し、第5クインタイルに属する人々はその他の人々と比べ支出額が約3倍増加する区分けとなっています。このことから、支出額が極端に多くなる富裕層においては児童労働の割合は貧困層と比べて高くないことが伺えます。

このように、エチオピアでは資産が少なく、支払い能力の低い世帯(=貧困層)において児童労働の割合が高いことが分かります。

ではなぜエチオピアでは貧困に陥っている人が多く存在するのでしょうか。

①人口増加による圧力

エチオピアは、2023年から2024年にかけて世界平均の約3倍にあたる年率2.52%という高い人口増加率を示しており、人口密度は年々高まっています。この急激な人口増加は、深刻な雇用不足、食料・水不足といった社会問題を引き起こしており、国民生活を圧迫しています。(参考①参考②

②土地の劣化

土地の劣化は、作物の生育に必要な栄養分や水分が不足し、収穫量が減少することを指します。このような土地の劣化は、気候変動による異常気象や、過度な耕作、森林伐採といった人為的な要因が複雑に絡み合って発生します。その結果、農家の収入が減少し、生活が困窮しているだけでなく、地域全体で食料不足が深刻化することもあります。参考③

③大人の就業状況

エチオピアの失業率は3.5%とあまり高くはありませんが、人口の約80%が賃金の低い農業に従事しています。

エチオピア農家の平均年収は31,180ブル、日本円にしてなんと約4万円です。このため、エチオピアの人々の多くは貧困に苦しんでいます。(参考④参考⑤参考⑥

このような状況下で、低賃金で働き、福利厚生を要求しない子どもたちは、経済的に苦しい家庭にとって貴重な労働力と見なされています。また、大人よりも器用な作業や、危険な環境での作業に子どもを従事させることで、家族全体の収入を維持しようとするケースも少なくありません。

文化的な要因も大きく影響しています。エチオピアでは、子どもは家族の財産であり、早いうちから労働を通じて生活に貢献することが期待されるという考え方が根強いのです。そのため、子どもたちに様々な仕事を与え、自立心を育むことが美徳とされる側面もあります。

さらに、教育の機会が均等に与えられていないことも、児童労働を助長する要因の一つです。学校までの距離が遠かったり、教育の質が低かったりするため、子どもたちが学校に通うことを諦め、労働に従事せざるを得ないケースも少なくありません。両親の離婚や、戦争や干ばつによる強制移住といった社会的な問題も、児童労働の増加に拍車を掛けています。

ガーナ(19位)

以前投稿した記事で、西アフリカにおけるカカオの児童労働問題について取り上げました。

カカオの生産が盛んなガーナにおける児童労働の割合は20%で19位、コートジボワールは15%で27位(圏外)にランクインしています。

カカオ生産における児童労働の歴史や、なぜカカオ生産で児童労働がなくならないのか、についてはこちらの記事をご覧ください↓

児童労働が子どもに与える影響

参考:https://www.unicef.org/ethiopia/media/3776/file/Report%20.pdf、file:///C:/Users/81807/Downloads/wcms_101161.pdf

児童労働は、子どもたちの心身に深刻な影響を与えています。

健康への悪影響: 重労働による怪我や病気、発育阻害などが懸念されます。

精神への影響:精神疾患に陥ったり、うまく社会に馴染めなくなるなど、精神的な問題を引き起こす可能性もあります。

教育の機会の喪失: 学校に通えないことで、将来の選択肢が狭まり、貧困の連鎖を断ち切るのが困難になります。

心理的なダメージ: 虐待や暴言、無視といった精神的な苦痛を受ける可能性があります。

経済的な搾取: 大人よりも低い賃金で長時間労働させられるケースが多く、大人になったときの賃金の低下にも繋がります。

しかし、児童労働が起こす影響は必ずしも悪影響ばかりではありません。

実際、南アフリカに住むマダガスカル出身の男性は、「小さい頃から家事を手伝っていたために、今一人で暮らしているけど何でもこなせるんだ」と話していました。

実践的なスキルを重視する文化圏では、児童労働が子どもたちの自立を促す側面もあるかもしれません。家事や仕事を通して得たスキルが、後の生活で役立つという側面も存在します。

それでも、児童労働がもたらす悪影響の大きさと、子どもたちの権利侵害という観点から考えると、現状のまま放置することはできません。児童労働問題の解決のための取り組みもたくさん存在します。

こちらの記事では、アフリカの農業分野における児童労働問題の解決のため、第5回児童労働撤廃国際会議が行われたことが書かれています。そこでは、児童労働を世界から撤廃するための行動指針である「ダーバン行動要請」が宣言されたとのことです。

SDGsにも児童労働撤廃を掲げる文言があり、今後もこのような取り組みが加速していくでしょう。

これからも児童労働に関する話題をご紹介していきたいと思います。一刻も早く子供に悪影響を及ぼす児童労働問題が解決されることを願います。


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