こんにちは!Pick-Up!アフリカです。
アジェンダ2063に関して記事にしていくアジェンダ2063シリーズ!
第7回は、エネルギーから、グランド・インガダム計画についてご紹介します。
アジェンダ2063の概要について詳しく知りたい方はこちら↓
元記事:「Is DRC’s Grand Inga Dam project a panacea to SADC power crisis?」
アフリカでは電力問題に悩んでいる国が多く存在します。今回注目するSADC(南部アフリカ開発共同体)の中でも、特にジンバブエと南アフリカでは既存の火力発電所の老朽化から、電力不足問題が深刻となっています。ジンバブエでは、22時間にもわたる送電停止が行われたり、南アフリカでは日々10時間の停電が起きたりと、安定した電力供給にはほど遠い状態であるとのことです。
そんな現状を打破すべく、アジェンダ2063の「15の旗艦プロジェクト」の中では、「グランド・インガダム計画」があげられています。この計画は、コンゴ川のダムで現在も行われている水力発電をより拡大し、多くの国の電力を補おうとする動きです。
完全に実施された場合、グランド・インガダムでは42GWもの電力が生産されることが予想されており、これは、現在世界最大とされる 22.5GW の生産力を持つ中国の三峡ダムを越して世界一の規模になるとされています。
元々、インガダムは三つのダムを立てる計画としてスタートしました。1920年から調査が始められ、1974年にインガ1ダム及びインガ2ダムが建設されたとのことです。しかし、インガ3ダムの建設にあたっては政治・経済的混乱から建設が進められておらず、また、建設にあたっても様々な懸念点があげられるようです。
特に大きな問題が2つあげられています。一つ目は、建設するのに莫大なコストがかかることです。インガ3ダム建設には800億ドルもの費用がかかるとされており、この費用を風力発電など他の電力発電への投資に当てた方がよいのではないかと考えられています。
しかし、今までにも投資先を変える取り組みは行われてきたにも関わらず、上手く進まなかった過去があります。2017年のREEESAPというプロジェクトは再生可能エネルギーを生み出す計画として進められていましたが、インフラ障害や資金不足、問題に対する枠組みの欠如などによって今でも進められていないとのことです。
また、二つ目としてあげられているのは、環境への影響です。ダムを建設することによって、コンゴ川に生息する水生生物の生息地を奪ってしまうことが考えられます。また、ダム建設は農地を失うことにも繋がるとのことです。
これらの大きな問題に加え、その他にも様々な懸念点があげられています。
南アフリカは2020年にインガダム計画を通じて5000MBを購入すると約束しましたが、この約束は果たされなかったとされています。というのも、以前投稿したこちらの記事でも書かれている通り、南アフリカではEskomという電力会社が国内の95%のシェアを獲得していますが、債務返済や一次エネルギーの価格高騰により財政難に苦しんでいます。また、Eskomがインガダムから電力を購入するとなると、年間約100億ランド(743億円)がかかるとされています。これは、その他の発電方法と比べても高く、現在南アフリカで行われている電力供給の3倍の値段だとされています。それにより、電力の価格の高騰が見込まれることも懸念点の一つとしてあげられています。
また、インガダムが作られたとしても、SADC(南部アフリカ開発共同体)に分ける前にコンゴ民主共和国の電力供給に力を入れるべきという声もあるとのことです。こちらの資料では、2019年の今後の電力普及状況について書かれており、全体では電気普及率は約20%と世界ワースト三位に位置していることがわかります。特に、都市部では42%、農村部では0.4%と地域格差が激しいとのことです。
このような状況を踏まえて、コンゴ市民はインガダム建設の目的がヨーロッパに電力を輸出するためなのではないかと、反対の声をあげている人もいるようです。
そして、電力投資の資金を政治家によって盗まれるといったような汚職への対処が必要だと述べられています。最終的に決定を下す権力者が、正しい政策を行うこと、政策のための正しい過程を踏むことが必要であると記事内で経済学者によって語られています。
以上のことから、グランド・インガダム計画は現在滞っていることがわかります。しかし、南アフリカやジンバブエ、コンゴ民主共和国のようなアフリカの国々の電力不足問題は未だ解決されないままです。今後、上記の懸念点を考慮した代替のアイディアが必要になってくるでしょう。アフリカ大陸での電力供給のために更なる電力発電が求められており、そのようなビジネスが今後必要となってくるでしょう。
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