目次
題:アフリカの日が開催!今年のテーマは「栄養と食糧安全保障」
訳 : アフリカ大陸の栄養と食糧安全保障におけるレジリエンスの強化
英題:‘Strengthening resilience in nutrition and food security on the African Continent’
記事リンク:https://www.majorcadailybulletin.com/island-life/living/2022/05/27/101753/insights-africa-day.html
こんばんは!pick-up!アフリカです。いつも記事をご覧いただき、ありがとうございます。
さて本日は、先月5月25日に行われた「アフリカの日」についてご紹介しようと思います。
アフリカの日とは、1963年5月25日に現在のアフリカ連合(AU)の前身である、アフリカ統一機構(OAU)が設立されたことを記念して、毎年5月25日に開催されています。
内容と背景:
こちらの記事によると、アフリカの日には毎年目標となるテーマが設定されており、今年のテーマは“Strengthening Resilience in Nutrition and Food Security on the African Continent.”(栄養と食糧安全保障におけるレジリエンスの強化)となっています。
本メディアでも度々取り扱っているように、アフリカにおいて安定して食糧を供給することは重要な課題となっています。
こちらの過去記事では、農業を含む第一次産業はサブサハラアフリカ各国のGDPにおいて18.5%を占める主要産業であることが述べられています。それにもかかわらず、今回のように栄養と食糧保障がテーマとしてあげられる背景には、アフリカにおける貧困と栄養不足の課題があります。
引用元の記事には、アフリカ大陸の全人口の3分の1にあたる4億2200万人が世界の水準以下で生活していることが記されており、さらにこちらの記事によると、2020年時点で2億8160万人の人が栄養不足の状態に瀕しているとされています。
アフリカの食糧生産および食糧供給には、近年も様々なリスク(例えば、東アフリカでの干ばつ、サバクトビバッタの大量発生、肥料価格の高騰、新型コロナウイルスの流行など)が存在しており、今年のテーマはこのようなリスクに対するレジリエンス(=弾力性、回復力)を強化することに焦点が当てられています。
本記事では、今年のアフリカの日を振り返りながら、今後アフリカが食糧供給のレジリエンス強化に関する課題を、いくつかの観点からご紹介したいと思います。
アフリカの日とは
引用元の記事によれば、アフリカの日は1963年の5月25日にエチオピアのAddis Ababaにおいて、アフリカ30か国の署名の下、OAU憲章が承認されたことが起源となっているようです。
さらにその前にさかのぼると、サブサハラアフリカで最初に独立を果たした国であるガーナを中心に、1958年4月15日に第一回アフリカ独立国家会議が開催されたという出来事があります。
この会議を記念して、毎年4月15日が「アフリカ解放の日(African Freedom Day)」に制定され、その後OAUの設立により、5月25日に日にちを変え、「アフリカ自由の日(Africa Liberation Day)」が制定されたとされています。(参考記事)
アフリカ連合(AU)のHPによると、このようにOAUの設立には植民地化とアパルトヘイトの脱却、そして加盟国の主権と領土の保全、国際協力を促進することが組織の目的として設定されているという背景があります。
その後、1999年9月にAUの創設が決定され、2002年7月に南アフリカのダーバンで正式に発足しました。
先ほどのAUのHPによると、AUはアフリカ諸国の発展と経済成長のための国家間の協力を目的としており、これにはアパルトヘイトからの脱却やアフリカ諸国の主権の回復を目的としていたOAUからの組織の方向性の変化を明確にする狙いが見られます。
このようにOAUがAUに姿を変え、組織の目的が変化していったことから、5月25日は「アフリカの日(Africa Day)」に変更され、OAU設立の功績をたたえる日として現在まで残り続けています。
さてそんなアフリカの日ですが、毎年アフリカでは記念式典ならびにAUの臨時首脳会談が開催されているようです。
こちらの記事によると、今年は「アフリカ大陸における栄養と食糧安全保障におけるレジリエンスの強化」という2022年のテーマに沿ってオンラインでの記念式典が開かれました。
また祝賀会と同じくして、赤道ギニアのマラボにてAUの臨時首脳会合が4日間にかけて開催されました。
同記事によると、健康、気候、食糧など、アフリカの食糧安全保障に関係するテーマが主な議題として取り扱われたようです。
日本でもアフリカの日に合わせて、各地でイベントが開かれています。
たとえば上智大学では、毎年アフリカの日の週にアフリカ・ウィークスを開催しており、今年もオンラインでアフリカに関連したシンポジウムや学生主体のワークショップが行われたようです。
ご興味のある方は、来年度はぜひとも参加してみては??
アフリカの栄養と食糧安全保障の現在地
さて本記事の最後に、今年のアフリカの日のテーマである栄養と食糧安全保障におけるレジリエンスの強化について、引用元の記事から現在のアフリカ各国が抱える課題についてご紹介します。
引用元の記事によると、今後アフリカ諸国がこの目標を達成していく上で取り組まなくてはならない課題として、以下の3つを取り上げています。
1.適切な土地利用
記事ではまず最初に、アフリカに残る広大な土地について触れています。記事によると、未だにアフリカの多くの土地において、政治的な権力の悪用による不正な土地流用が行われており、食糧生産のための有効的な土地利用がなされていないと記されています。
そのような土地利用の背景として、こちらの別の記事ではアパルトヘイト下で多くの原住民たちが土地を追い出され、黒人の土地の所有が制限されていたことが記されています。
土地利用の問題に関しては、農家の土地所有率の低さがアフリカの農家による新しい農業技術の導入を阻害しているということが、こちらの過去記事で取り上げています。
アフリカ農業における土地利用の問題に関しては、こちらの記事をご覧ください。
2.水管理
二つ目に取り上げられているのが、水管理の重要性です。記事では、気候変動などの影響を受け、近年アフリカ諸国で降水パターンが不確実になってきていることについて言及されています。
実際に昨今のアフリカでは、東アフリカの記録的な干ばつや南アフリカにおける集中的な豪雨による洪水の発生など、安定した食糧生産を脅かす異常気象がいくつも発生しています。
このような環境リスクに対応できる栽培管理や、リスクヘッジの普及が今後のアフリカにおける食糧の安定供給につながると見られています。
これらの環境リスクに対するアフリカ農業の新たな取り組みとしては、私たちの過去記事でいくつか取り上げています。例えばこちらの記事では、UNDPが主体となってボツワナで取り組まれている干ばつに強い農業技術の支援について取り上げています。
そのほかにも、灌漑農業の導入によって、降雨に依存した天水農業から脱却すること、農業保険を導入し、災害時の作物の減収リスクに備えるなどの対策が講じられています。
これらの農業技術についての特集は、以下の関連記事をぜひご参照ください。(関連記事1、2)
3.新しい農業技術の導入
記事内で最後に触れられているのが、新しい農業技術の導入です。
引用元の記事で指摘されているのは、自給自足的な農業から商業的な農業への移行が求められているということです。本格的に商業的な農業に移行するためには、新たな農業技術を導入し、従来の方法では生産できなかった量、品質の作物を生産する必要性が生じてきます。
加えて自給的な農業は、前述の2.の項でも取り上げた環境リスクへのレジリエンスを高めると、こちらのEUのHPで紹介されています。商業的な農業への転換によって農業によって得られる利益を拡大することで、自給的農業に比べ作物の不作時のリスクを減少させることができます。
一方でアフリカの農業の生産性には未だ多くの課題が残っており、生産性を向上させるための新たな技術導入が求められています。
例えばこちらの過去記事によると、アフリカの農業における化学肥料の使用率の低さにより、十分な生産性が得られていないことが指摘されています。
生産性の拡大や食糧供給の安定に貢献する農業技術としては、遺伝子組み換え作物の導入や、コールドチェーンの拡大によるポストハーベストロス削減が有効な手段として考えられています。(参考記事3、4)
これらのような農業への新技術の導入については、アフリカ各国政府が積極的に海外の民間企業を誘致するための環境整備を行っているようです。
例えばこちらの記事では、ルワンダ政府の農業技術の導入に向けた動きについて紹介されています。記事によると、ルワンダでは自給的な農業から商業的な農業への移行を推進し、農業加工品の生産やアグリテックの導入に向けた戦略が行われており、新たなベンチャー企業の参入や、製品の輸出時にかかる税金に優遇制度を設けることで、海外の投資家の積極的な参入を促しています。
いかがでしたでしょうか?このように今年のテーマは栄養と食糧安全保障であることからも、今年一年アフリカ各国が農業関連の政策、事業に力を入れることが予想されます。
毎年のアフリカの日のテーマから、その年のアフリカ全体のビジネストレンドを予測してみるのもいいかもしれませんね!
以下の関連記事では、アフリカの農業イノベーションに関する過去記事をまとめております。そちらも是非ご覧ください!
また、アフリカ進出のご相談がございましたらその下のリンクからお問い合わせください。
関連記事:
1.コロナ禍でアフリカの農業に変化?eコマースが農業の流通を変える【Pick-Up! アフリカ Vol. 2:2022年1月21日配信】 – Link
2.ケニアの農家、アプリで困難を乗り越える!?【Pick-Up! アフリカ Vol. 191:2021年7月6日配信】 – Link
3.コールドチェーン網の形成:ナイジェリア起業家へのインタビュー【Pick-Up! アフリカ Vol. 117:2021年2月26日配信】 – Link
参考記事:
1.Africa Day: David-Lanre Messan skydives to honor African Founders | THISDAYLIVE – Link
2.GM作物でアフリカの農業はどう変わる?ナイジェリアとケニアが共同研究を発表【Pick-Up! アフリカ Vol.31:2022年5月13日配信】 – Link
3.New interactive report shows Africa’s growing hunger crisis [EN/AR/ZH] – World | ReliefWeb – Link
4.アフリカの角を襲う干ばつで、1300万人が深刻な飢餓に直面 | World Food Programme – Link
5.サバクトビバッタの大群発生は収束か。2022年現在の最新動向【Pick-Up! アフリカ Vol.17 – Link
6.ロシア-ウクライナ紛争がアフリカに与える影響は?【Pick-Up! アフリカ Vol.13:2022年3月4日配信】 – Link
7.給食の復活が、アフリカの子供たちに教育を取り戻す【Pick-Up! アフリカ Vol.16:2022年3月11日配信】 – Link
8.History of Africa Day – 25 May – Link
9.About the African Union – Link
10.Africa Day 2022 – Africa’s Year of Nutrition – African Business – Link
11.上智大学アフリカ・ウイークス2022をオンラインで開催 | ニュース – Link
12.Land was stolen under apartheid. It still hasn’t been given back | CNN – Link
13.[更新]アフリカでスマート農業は普及するのか?アフリカ農業に必要な支援とは【Pick-Up! アフリカ Vol. 1:2022年1月7日配信】 – Link
14.UNDPがボツワナで気候変動対応型農業に投資【Pick-Up! アフリカ Vol. 67 :2020年12月22日配信】 – Link
15.Unpredictable rains mean subsistence farmers need a new approach – and improved market | EU Emergency Trust Fund for Africa – Link
16.アフリカで化学肥料を普及させるには【Pick-Up! アフリカ Vol. 224:2021年10月11日配信】 – Link
17.アフリカ農業における課題点からみるコールドチェーン構築の必要性【面白記事 Vol. 108: 2020年8月14日配信】 – Link
18.Rwanda targets move away from subsistence agriculture – African Business – Link
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