記事リンク:https://www.devex.com/news/how-covid-19-laid-bare-africa-s-medical-oxygen-crisis-102845

題:コロナウイルスが明かにしたアフリカの医療用酸素危機

英題:How COVID-19 laid bare Africa’s medical oxygen crisis

内容と背景:

こんにちは!Pick-Up!アフリカをご覧いただきありがとうございます。

今回は、コロナ禍アフリカの医療物資供給の問題に関する記事をピックアップしました。

アフリカは、この数年間でのコロナウイルス流行の影響を強く受けた大陸の1つです。実際にこちらの記事では、アフリカでこれまでに報告された感染者数は1100万人、死者数は25万人ですが、報告されていない数を含めるとアフリカ人口の2分の3がコロナウイルスに感染した可能性があることが示されています。

こうした流行の背景として、こちらの記事ではアフリカにワクチンが行き渡っていない状況が挙げられています。具体的には、コールドサプライチェーンの欠如による供給不足や国民の間の危機感の薄さがワクチンの普及を妨げており、そのために現在でもアフリカ全体で2回接種率は15%に留まることが示されています(参考記事3)。

ワクチンの重要性が謳われる中でこれまで国際社会はこうしたワクチン供給の不足に注目してきましたが、今回ご紹介する記事では、コロナウイルスが長期的に流行する中でアフリカの酸素不足の問題が浮き彫りになってきていることが紹介されています。

アフリカの医療用酸素供給の状況

ここでいう酸素というのは、呼吸器系に障害を持つ患者に室内空気よりも高濃度な酸素を供給するために用いられる医療用酸素のことを指します。今回の記事では、アフリカではコロナ以前からこの医療用酸素の供給が不足していましたが、コロナウイルスの蔓延でさらに状況が悪化したと述べられています。

コロナ禍以前から医療用酸素が充分でなかった理由としては、政府の支援の欠如が挙げられます。具体的に、以前ご紹介したこちらの記事では、アフリカにおける医療支出は世界の1%の割合しか占めておらず、さらに2001年にアフリカ諸国52か国が年間の国内予算の15%をヘルス分野に充てることを約束した一方、この目標を達成したのは4か国のみであったという報告があります。

またその中でも特に医療用酸素の分野に関しては、コロナ以前の段階でナショナルロードマップを設定し、その供給拡大のために国としての取り組みを行っていたのはナイジェリアとエチオピアの2か国のみであるように、政府による全体的な支援が欠けていたことがこちらの記事で示されています。

こうしたことからアフリカでは慢性的に酸素が不足している状況があり、特にソマリアでは、コロナ以前で酸素療法を提供する公立病院が国内に一つも存在していなかったことが紹介されています。

また、コロナウイルスの拡大でこうした酸素不足が悪化した理由としては、このウイルスの流行によって医療用酸素の需要が激増した状況が挙げられます。この例として、こちらの記事では、ナイジェリアの首都における酸素ボンベの需要が2020年初頭から11月にかけて約7倍にまで増加したことが紹介されていますが、こうした中でアフリカの医療用酸素の供給がさらに滞ったことが記事では示されています。

このように悪化した状況の改善を目指し、WHOやロックフェラー財団が支援を行ったことでソマリアでは公立病院で酸素療法が開始され、パンデミック当初から2021年初頭にかけて、アフリカ全体では酸素発生プラントは68棟から119棟、酸素濃縮器は2600台から6100台まで増加しましたが、それでもパンデミック第3波で必要となった酸素の3分の1しか供給できなかったとこちらの記事では述べられています。

医療用酸素の供給に向けた取り組み

記事では、このような形でアフリカの酸素不足の状況が浮き彫りになる中、最近では国や企業が積極的に医療酸素の生産、供給の向上を目的とした取り組みを行っていることが紹介されています。

ここでは、その中でも記事で紹介されているウガンダ、ナイジェリアでの取り組みをご紹介します。

ウガンダでは、パンデミック以前は慢性呼吸器疾患の診療を行う施設の36%しか酸素を利用できませんでしたが、300台以上の酸素調整器を調達したことで酸素療法へのアクセスを安定させ、酸素不足を原因とした重症化で集中治療にかかる患者の数を減少させることに成功しました。

ナイジェリアは、国中の酸素製造プラントを修理し、工業用酸素メーカーと協力して工業用酸素プラントを再利用する計画を開始しました。この計画によって国内の製造プラント数を約30から70以上に増加させ、医療用酸素の国内生産量を向上させました。

また、こちらの記事では、ナイジェリアが大規模な酸素プラントを有する自国の空軍と連携して医療用酸素ボンベの生産を向上させるとともに、軍機を用いた空輸で地方にも医療用酸素ボンベの供給を拡充したことが紹介されています。

そしてナイジェリアでは、同様にLifebankと呼ばれる企業も活躍を見せています。この企業は、血液や酸素ボンベといった医療物資のデリバリーを行っていますが、酸素供給に関しては、50もの酸素生産プラントと提携するとともに、自社でも酸素を生産することで、安定的な供給を実現させています(参考記事8)。

こうした取り組みを経てアフリカでの酸素供給の状況は改善してきていますが、一部の取り組みがコロナウイルスの対策資金を受けて行われていることを踏まえると、(参考記事9)コロナ以後は資金調達が不十分になり、この分野での取り組みが減少する可能性が考えられます。

しかしながら記事では、酸素供給不足はアフリカの慢性的な問題であり、コロナ以後も長期的な対策が必要であることが示されています。上記のようにこの分野へのアフリカ政府からの支出は慢性的に不足しているため、今後も外部からの継続的な投資が行われることに期待が寄せられます。

Pick-Up!アフリカでは以前にもコロナウイルスに関する記事を取り扱ってきました。参考記事の下にそれら記事をまとめましたので、ぜひ合わせてお読みください!

また、アフリカ進出に関するご相談がございましたらその下のリンクからお問い合わせください。

参考記事:

1.WHO: Two-thirds of people in Africa may have had COVID-Link

2.アフリカ諸国が直面するワクチン供給の課題とは【Pick-Up! アフリカ Vol. 194:2021年7月12日配信】-Link

3.COVID-19 Vaccination, Latest updates from Africa CDC on progress made in COVID-19 vaccinations on the continent-Link

4.アフリカの医療課題解決のための官民連携【面白記事 Vol. 61(2020年6月17日配信)】-Link

5.Oxygen provision to fight COVID-19 in sub-Saharan Africa –Link

6.’Oxygen, oxygen, oxygen’: Nigeria battles shortages amid COVID-19 surge-Link

7.Oxygen supplies and COVID-19 mortality in Africa-Link

8.Lifebank-Oxygen-Link

9.‘Code Red’ Oxygen Shortages in 32 Countries; But with Finance Available Countries Need to Step up to Bat-Link

関連記事:

1.アフリカにおけるコロナワクチンの現状【Pick-Up! アフリカ Vol. 243:2021年12月08日配信】-Link

2.アフリカのコロナの今は?【Pick-Up! アフリカ Vol. 80:2021年1月14日配信】-Link

3.コロナ禍で進む!アフリカのヘルスイノベーション分野【Pick-Up! アフリカ Vol. 40 (投稿:2020年11月19日)】-Link


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