記事リンク:

https://www.brookings.edu/blog/africa-in-focus/2022/03/18/africas-just-energy-transition-could-boost-health-outcomes/

題:健康を増進することができるアフリカのエネルギー転換

英題:Africa’s just energy transition could boost health outcomes

内容と背景:

こんにちは!Pick-Up!アフリカをご覧いただきありがとうございます。

本日は、環境保護と健康をテーマに開催された今年の世界保健デー(4月7日)に関連して、アフリカの家庭における燃料利用がもたらす環境、健康の問題についての記事をピックアップしました。

皆さんは、バイオマス燃料というものをご存じでしょうか?

バイオマス燃料とは、薪、木炭、動物のふんなど動植物のエネルギーを利用した固形燃料のことを指します。こうした燃料は、日本など先進国では発電のために利用されることが増えてきていますが、アフリカでは伝統的に暖炉や調理のための燃料として広く用いられており、実際に今回の記事では現在14億と言われるアフリカの人口のうち約9億人がこの燃料を上記の目的で用いていることが紹介されています。

このようにバイオマス燃料の利用がアフリカで普及している一方で、今回の記事では、調理や暖炉のためにバイオマス燃料を利用することが健康問題や環境問題に繋がる可能性が示唆されており、そのためにエネルギー転換が必要であると述べられています。

バイオマス燃料利用がもたらす問題

調理や暖炉でのバイオマス燃料利用がもたらす健康問題について、記事では、この燃料が燃えるときに排出される有害な煙が病気の原因となり、多くの人々を死に至らせていると述べられています。実際にこちらの記事では、バイオマス燃料を使用した調理の際に発生する煙が原因で、毎年アフリカで400〜500万人が平均寿命より若く死亡していることが示されています。

さらに、同様にバイオマス燃料利用がもたらす環境問題として記事では、森林破壊と温室効果ガスの排出が挙げられています。具体的に、こちらの記事では薪や木炭の利用のための森林伐採により毎年200万ヘクタール(ガンビアの面積の2倍)もの森林が失われており、木炭の利用により10億トンの温室効果ガスが毎年排出されていることが紹介されています。

こうした問題があるにも関わらず、ガスの市場価格が髙かったり、電力の供給が充分でない状況からこれらの比較的クリーンなエネルギーへとシフトすることが難しく、依然アフリカの家庭の80%がバイオマス燃料を利用していると言われています。

バイオマス燃料の問題を解決しうるケニアのスタートアップ

このような状況がある中、バイオマス燃料に代わるクリーンなエネルギーの普及を目指すスタートアップの活動がケニアを中心に盛んになってきており、その活動が上記の問題を改善することに期待が持たれています。

まずは、バイオエタノールの販売を行うケニアのスタートアップ「KOKO Networks」の活動をご紹介します。バイオエタノールとは、バイオマスを発酵させて製造するエタノールのことであり、その特徴の一つとして、燃料として利用する際有害な煙を出さないことが挙げられます。ケニアのKOKO Networksは、こうしたバイオエタノールを低価格で販売することで低、中所得者層のバイオマス燃料からのエネルギー転換を促しています。(参考記事3 , 4)。

実際に、KOKOのバイオエタノールはガスと比べても低価格なケロシンの約2分の3の価格で販売されていますが(参考記事5)、こうした低価格によって、ケニアで販売を開始してから4年で約150万人が調理の際にKOKOのバイオエタノールを使用するようになったとこちらの記事では紹介されています。

次に、同様にケニアのスタートアップであるEcoboraの活動についてご紹介します。以前こちらの記事でもご紹介しましたが、Ecoboraは太陽電池式調理用コンロを農村地帯の学校に設置する取り組みを行っています。

この企業は2021年にIKEAが主催するsocial entrepreneurshipプログラムに参加したことをきっかけに活動を拡大させ、その結果27万トンの木の伐採を予防するとともに、学校あたり30トンのCO2量の削減に貢献したとこちらの記事では紹介されています。

こうした形でバイオマス燃料の代替エネルギーがケニアで普及する中、バイオマス燃料によって引き起こされていた環境問題や健康問題が改善されつつあり、そのために他のアフリカの地域でもこれらのエネルギーに注目が集まっています。

その一例としてこちらの記事では、KOKO Networksの活動に目を付けたルワンダ官庁が同社と契約を結んでバイオエタノールの全国的な販売網をルワンダに構築することに合意し、KOKOがルワンダで2500万ドルの投資をおこなうことが決定されたと紹介されています。

こうした形で、ケニア以外のアフリカ地域でもバイオマス燃料からの脱却が進展していくことが予想されます。これらのスタートアップだけでなく、今後出てくる新たな企業の活躍にも期待したいです。

Pick-Up!アフリカでは、これまでにも環境に関する記事を扱ってきました。参考記事の下に以前の関連記事が紹介してあるので、ぜひご覧ください!

また、アフリカ進出に関するご相談がありましたらその下のリンクからお問い合わせください。


参考記事:

1.Clean Cooking: Why it Matters-Link

2.Africa’s $40B Market for Cooking Fuel Is Being Cleaned Up: Q&A-Link

3.バイオエタノール-環境天文台-Link

4.Tech-led biofuel startup Koko Networks launches new consumer goods business in Kenya-Link

5.Nairobi’s fuel dispensers replace charcoal, kerosene with biofuel-Link

6.KOKO Expands Into Rwanda in Bid to Replace Charcoal With Ethanol-Link

7.遂にZipline社が米国でも運用開始へ!他、ケニアにて開催されたハードウエア部門における仮想ISHOWに関する話題【面白記事 Vol. 51: 2020年6月4日配信】-Link

8.ECOBORA have developed a clean, affordable cookstove that helps marginalized schools reduce cooking costs-Link

9.RWANDA : Koko Networks va investir 25 M$ pour la cuisson écologique-Link

関連記事:

1.遂にZipline社が米国でも運用開始へ!他、ケニアにて開催されたハードウエア部門における仮想ISHOWに関する話題【面白記事 Vol. 51: 2020年6月4日配信】-Link

2.環境系の取り組みもアフリカではビジネスチャンス!?【面白記事 Vol. 82(2020年7月11日配信)】-Link

3.温室効果ガス削減を目指して、燃料の脱炭素化へ【Pick-Up! アフリカ Vol. 249:2021年12月30日配信】-Link


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