目次
題：国連世界水開発報告書2022：地下水：見えないものを可視化する
英題：The United Nations World Water Development Report 2022: Groundwater: Making the invisible visible
内容と背景：
こんにちは！Pick-Up!アフリカをご覧いただきありがとうございます。本日はアフリカの水問題に関する記事をピックアップしました。
今回の記事では、世界水の日（3月22日）に合わせて発表された国連世界水開発報告書について紹介されており、これからのアフリカの水問題を解決する為には、地下水を有効に活用していくことが重要であるという内容が示されています。
アフリカの水問題
アフリカの水問題は、世界と比べても深刻な状況にあります。実際にこちらの記事では、2019年時点において、世界全体で約18億人が安全な水を得ることが出来ない状況にある中、そのうちの半数がアフリカ人であり、さらにサブサハラアフリカにおいては安全な水にアクセスできる人口は全体の24%のみに限られていることが示されています。また、こちらの記事では、水の安全性を考慮しなかった場合でも、アフリカ大陸で水不足に直面している人口は4億人存在することが紹介されていますが、このように、安全でない水ですら安定して確保できない人々も依然多く存在しています。
こうした水不足の原因としては、主に3つのことが挙げられます。
1つ目は、インフラ設備や管理の不足です。こちらの記事では、タンザニアなど一部の国で地表水の安定供給に不可欠なダムが不足していること、また、こちらの記事では南アフリカにおいて、パイプの管理不足による水漏れや破裂によって水供給が37%損なわれていることが紹介されていますが、こうした設備、管理の不足のために国民の多くに水の供給を安定して行うことが難しい状況があります。
2つ目は、地球温暖化に伴う干ばつです。こちらの記事では、地球温暖化が進行すると大雨が増える一方、定期的な弱い雨の頻度が減少して干ばつが増加し、地表水不足の原因となると述べられていますが、実際にこちらの記事では地球温暖化の影響で2000年からの20年間での干ばつの回数、期間が世界全体で、その前の20年間と比べて29％増加したことが紹介されています。またこちらの記事では、アフリカの一部の地域が世界の2倍のペースで温暖化していると述べられていますが、こうした中で干ばつの影響を最も受けているのはアフリカであり、国ごとの干ばつのリスクを示したこちらのデータでは、上位13位中10か国がアフリカの国という状況です。
3つ目は、急激な人口増加です。現在アフリカの人口は約14億人であり、10年前と比べると3億人増加しましたが、今後それよりもさらに速いスピードで人口が増加してゆき、2050年にはその数が25億人まで増加すると予想されています。このように、世界でも最も速いペースで人口が増加する中、地表水を有効活用するのみでは水不足を解消できなくなってきています（参考記事9）。
地下水への期待
今回の記事では、上記のような人口増加や地球温暖化による水不足を解決しうる存在として、地下水への期待が示されています。具体的に、その理由として2つのことが記事では述べられています。
1つには、人口増加を補えるほど豊かな量の地下水が存在している事です。実際に記事では地下水が全世界の淡水量の99%と、莫大な量を占めていることが紹介されていますが、アフリカもその例外ではなく、約66万km3と推定されるアフリカ全体の地下水量は大陸の湖に蓄えられている淡水量の約20倍であり、これはアフリカのほとんどの国が50年間の干ばつに耐えられるほどの量であると考えられています。（参考記事10, 11）。
2つには、地下水は地球温暖化による悪影響を受けにくいという事です。こちらの記事では、温暖化の影響で地表水の蒸発散量が2003年から2019年の間で10％減少したことが紹介されていますが、今回の記事では、地下では地上の気温変化の影響を受けにくいため、地下水量は温暖化による蒸発量の増加で損なわれる可能性が少ないと述べられています。また今回ご紹介しているレポートでは、今後アフリカでは温暖化に伴って大雨が増える可能性が高いですが、その大雨によって地下まで浸透した水が地下水となるため、地下水量が減少する可能性は低いと言及されています。さらに、レポートではこの傾向は雨が少ない干ばつ地帯において強いと推測されており、そのために地下水はアフリカの干ばつ地帯に水を安定供給することができる存在として注目されています。
こうしたことからアフリカでの地下水の有効活用の重要性が認識され始めており、世界の平均が25％なのに対し、6.7%に留まるアフリカの地下水利用率を向上させるための活動が広まってきています。
地下水の有効活用に向けた取り組み
具体的には、インフラの拡充やテクノロジーの活用で地下水の利用を拡大しようとする活動が近年活発化しており、主に南アフリカの企業や団体がこの分野で活躍しています。
そのうちの1つとしてこちらの記事では、2020年にコカ・コーラが開始したCoke ville projectが紹介されていますが、太陽光発電による地下水採水・処理の導入、拡大により、150万リットルの水が汲み上げられ、これにより南アフリカの15000世帯が安全な水へのアクセスを得たと述べられています。
またこちらの記事では、1100万ランドの研究助成金を得た南アフリカでの地下水の研究について紹介されていますが、ドローンを用いた最新の地質調査により地下水のマッピングが行われることで、今まで知られていなかった有用な地下水源の発見に期待が寄せられていることが示されています。
このように活動が広がる一方で、地下水利用にあたって安全性の課題もあります。地面を通る過程で浄水される地下水は基本的には地表水よりも安全なのですが、レポートによると、近年では一部の地域で海面上昇による海水の侵入や採鉱活動による汚染が発生しており、それが地下水の安全性を損なっていると述べられています。特にエチオピアでは、大地溝帯に存在する井戸の40％がWHOの基準を越える値で汚染されていたことが紹介されています。
こうした安全性の問題を改善し、豊富な地下水をフルに活用していくためには今後地下水のデータ確保、環境規制の強化、人的、物的資源の増強が必要になることが記事では示されています。民間、公的機関の連携でこうした課題を乗り越え、地下水利用がアフリカで普及していくことが期待されます。
Pick-Up!アフリカでは、過去にも水問題に関する記事を投稿してきました。下に関連記事をまとめたので、ぜひご覧ください！
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関連記事：
1.南アフリカSDGs、水分野の目標を達成できない見通し？【Pick-Up! アフリカ Vol. 144：2021年4月2日配信】-Link
2.アフリカの気候変動への耐性を高めるための新たな取り組みとは？【Pick-Up! アフリカ Vol. 221：2021年10月4日配信】-Link
3.アフリカで亡くなる子どもを減らすためにーエリトリアの小児ヘルスケアの取り組み【Pick-Up! アフリカ Vol. 3：2022年1月24日配信】-Link
参考記事：
1.Africa: Home to Multiple Clean Water Solutions-Link
2.Climate Change Is Hurting Africa’s Water Sector, but Investing in Water Can Pay Off-Link
3.Water Stress in Sub-Saharan Africa-Link
4.Our next 100 years: Helping South Africa get smart about water with Digital Twins-Link
5.Africa warming faster than rest of world: IPCC Sixth Assessment Report-Link
6.地球温暖化と「水」-Link
7.Climate change, water scarcity and security-Link
8.Climate change puts food supply at greater risk-Link
9.Drought risk score worldwide 2020, by country-Link
10.Africa Population 1950-2022-Link
11.Full Extent of Africa’s Groundwater Resources Visualized for the First Time-Link
12.Untapped Groundwater Could Help African Nations Endure Worsening Drought-Link
13.Satellite data reveals impact of warming on global water cycle-Link
14.GROUNDWATER Making the invisible visible-Link
15.Coca-Cola Beverages SA goes off-grid to tackle the country’s water crisis-Link
16.University drones research facility receives R11m grant-Link
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