題:2022年の資金調達から見る、躍進が期待されるアフリカのアグリテックスタートアップ企業7選(シリーズ:アフリカの農業とイノベーション 其の5)

訳 : 2022年上半期のアフリカアグリテック企業の資金調達

英題:‘AFRICAN AGRITECH FUNDING FOR THE FIRST HALF OF 2022

記事リンク:https://venturesafrica.com/african-agritech-funding-for-the-first-half-of-2022/   

キーワード:アグリテック スタートアップ 資金調達 アフリカ

こんばんは!pick-up!アフリカです。いつも記事をご覧いただき、ありがとうございます。

今回は過去4週にわたってお送りしたアフリカの農業とイノベーション」シリーズですが、今回はその最終回かつ総まとめとして、2022年上半期のアフリカアグリテック市場の注目スタートアップ企業をご紹介します。

過去4回でご紹介したアグリテックのトレンドと照らし合わせて、2022年下半期、そして来年以降のアフリカアグリテックビジネスをのぞいてみましょう。

内容と背景:

アフリカの注目アグリテックスタートアップたち

前回の記事(加速するスタートアップへの期待と課題)の中で、2021年のアフリカのアグリテックスタートアップ企業の年間資金調達総額は約9.5億ドル、2020年の約6億ドルから58.5%上昇しており、同市場への投資が急速に増加しているということをお伝えしました。

今回の引用元記事では2022年上半期の同市場への投資額についてまとめられており、記事によると、2022年3月1日時点で110のスタートアップ企業が10億ドル以上の資金調達を行っており、この時点ですでに2021年の総資金調達額の半分以上の金額を達成しているようです。

本記事では、引用元記事内で取り上げられている注目のアフリカアグリテック分野のスタートアップ企業と、2022年上半期の資金調達額を簡単にご紹介します。

1. Thrive Agric(ナイジェリア)‐ 資金調達額:5,640万ドル

ナイジェリアのThrive Agric社は2017年に創設された企業で、スマートフォンアプリを通じて、アフリカの小規模農家に金融、データに基づいた栽培管理アドバイス、農作物の市場へのアクセスの提供を行っています。(HP

2. Apollo Agriculture(ケニア)‐ 資金調達額:4000万ドル

2016年に創立、BRINGING COMMERCIAL FARMING TO EVERYONE(商業的農業を全ての人に)をコンセプトに、衛星データと機械学習アルゴリズムを用いて、小規模農家の金融、栽培管理のアドバイス、保険などへのアクセスを提供しています。(HP)

3. Farmerline(ガーナ)‐ 資金調達額:1290万ドル

Alloysius Attah氏とEmmanuel Owusu Addai氏によって2013年に創業されました。同企業の最大の特徴は独自のAIプラットフォームMergdataであり、このプラットフォーム上で農家と市場などあらゆる関係者を繋ぎ、農家へ市場へのアクセスや農業教育の機会を提供しています。(HP

4. Nile(南アフリカ)‐ 資金調達額:510万ドル

Nile社は2020年に創業された比較的新しいアグリテックスタートアップ企業で、eコマースを利用して、生鮮食品のB2Bデジタルマーケットを運営しています。市場をデジタル化することで、取引価格の透明化や品質の向上・保障に寄与しています。(HP

5. Victory Farms(ケニア)‐ 資金調達額:500万ドル

こちらの企業は2014年に創業した、漁業のイノベーションに特化したスタートアップ企業です。ドローンなどのテクノロジーを用いて、持続可能かつ栄養価の高いティラピアの養殖に取り組んでいます。(HP

6. Hello Tractor(ケニア・ナイジェリア)‐ 資金調達額:450万ドル

この企業は未だ機械化が進んでいないアフリカの農業地域において、農家とトラクター事業者をマッチングすることで、農家への農業機械の提供を行っています。こちらの企業については過去にMasterCard Accelerateというプログラムに採用されており、過去記事でもご紹介しているので、そちらもぜひご覧ください。(HP過去記事

7. Fresh Source(エジプト)‐ 資金調達額:非公開

こちらの企業は詳細な資金調達額は非公開であるものの、今年2月に100万ドル代の大型資金調達を達成しました。2019年に創業され、エジプト国内で農家とレストラン、ホテルなどを繋ぐB2Bデジタルプラットフォームを運営しています。(HP

アグリテック市場のトレンドと資金調達

さて今回のアフリカの農業とイノベーションシリーズ第3回の記事で、現在のアフリカアグリテック市場のトレンドについてご紹介したのは、覚えていますでしょうか?(まだ読んでいないという方はこちら

第3回の記事内では、アフリカアグリテック市場のトレンドとなるキーワードとして、「小規模農家」「情報」「気候変動」の三つにフォーカスしました。

本記事でご紹介した企業はどれも、「小規模農家」に今までアクセスが困難であった「情報」を提供することで、小規模農家の利益利益や食糧供給に貢献する事業を行っています。

「気候変動」という点に関しては、1. Thrive Agricや2. Apollo Agricultureが衛星データや気象データを用いた栽培管理アドバイスや保険へのアクセスを提供しており、小規模農家の異常気象の発生に対するレジリエンスの向上に貢献していると見られます。

またシリーズ第1回2回目では、それぞれMastercard社、Microsoft社が行っているアフリカのアグリテック市場への投資、ハッカソンについてご紹介しました。

Mastercardt社はアフリカの大手銀行Ecobankグループと共同して、農作物のデジタルマーケットプラットフォームを開発しており、今回の企業の中にも3. Farmerlineや4. Nile、7. Fresh Sourceなど、デジタルマーケットを提供することで小規模農家の市場へのアクセスや公正な価格での商品取引を支援している事業はいくつか見られます。

Microsoft社のプロジェクトは、スタートアップ企業を対象としたハッカソン(the Agro Innovate Hackathon)の開催です。こちらは小規模農家の生産性と収益性の低さ、データへのアクセスの低さという課題に着手しており、アフリカ農業における情報の民主化を目標に掲げています。今回の企業でいうと1. Thrive Agric、2. Apollo Agriculture、3. Farmerline、5.Victory Farmsが該当する事業でしょうか。

一方で、前回の記事の最後にアフリカアグリテック企業が克服すべき課題として、シード期以降の資金調達額の少なさというものが挙げられました。本記事で紹介した企業の中では、2. Apollo AgricultureはシリーズBの資金調達を達成しているほか、1. Thrive Agricもすでに7回の大型資金調達を達成しており、この2社に関してはすでに事業が軌道に乗っているように見受けられます。

それ以外の企業では、3. Farmerlineは今回プレシリーズAの資金調達を達成しており、前回の課題として挙げられていたシード期以降の資金調達を達成した形になります。そのほかの5. Victory Farms、6. Hello Tractorらは現時点ではシード期であり、ここからさらなる資金調達を行うことができるのかに注目が集まります。

Farmerline社の資金調達総額が約1370万ドル、Victory Farms社の資金調達総額が約800万ドルであることから、事業形態にもよりますが1000万ドルの資金調達が達成できるかが、この市場における事業拡大のカギとなりそうです。(参照1

まとめ:アフリカアグリテックの今後のトレンドはいかに

本連載で紹介した実例の範囲で確認すると、アフリカのアグリテック市場において、様残なデータを農家に提供するタイプのデジタルプラットフォームは、すでに業界での評価、実績ともに獲得しつつあり、このようなプラットフォームは急速に広まっていくと思われます。

一方で、eコマースなどを用いて農家と消費者、市場を繋ぐデジタルマーケット事業や、5. Victory Farms、6. Hello Tractorに代表されるような農業の中でも特定の分野にフォーカスした事業は、まだ多くの企業がビジネスの基礎を形成している段階にあると見られ、今後どの企業が台頭するのか、しばらくは目が離せなさそうです。

いかがでしたでしょうか。本記事をもって、アフリカ農業とイノベーションシリーズは簡潔となりますが、今後もPick-Up!アフリカでは、アフリカのアグリテック市場の動向をいち早くお伝えしていきます。ぜひご注目ください!

またPick-Up!アフリカを運営するレックスバートコミュニケーションズは、アフリカ進出に関するご相談をお受けしております。ご興味がある方はぜひ下の「ご相談 お問い合わせ」からご連絡ください。

参考記事:

1.増加するアフリカアグリテック市場への投資:加速するスタートアップへの期待と課題(シリーズ:アフリカの農業とイノベーション 其の4)【Pick-Up! アフリカ Vol.50:2022年7月8日配信】 – Link

2.ThriveAgric – Link

3.Apollo Agriculture – Link

4.Farmerline – Link

5.Nile – Link

6.Victory Farms – Link

7.Hello Tractor – Link

8.FreshSource – Link

9.Crunchbase – Link

関連記事:

1.アフリカのアグリテック市場のトレンドと、今後の動向に迫る(1)(シリーズ:アフリカの農業とイノベーション 其の3)【Pick-Up! アフリカ Vol.48:2022年6月24日配信】 – Link

2.アフリカの日が開催!今年のテーマは「栄養と食糧安全保障」【Pick-Up! アフリカ Vol.37:2022年6月3日配信】 – Link

3.Master cardがアフリカ農業バリューチェーンのデジタル化に向けたプロジェクトを始動!(シリーズ:アフリカの農業とイノベーション 其の1)【Pick-Up! アフリカ Vol.42:2022年6月17日配信】 – Link

4.Microsoft社がアフリカの農業に参入!アグリテックスタートアップのハッカソンを開催(シリーズ:アフリカの農業とイノベーション 其の2)【Pick-Up! アフリカ Vol.45:2022年6月24日配信】 – Link

5.アフリカ的な投資スタイルとは?《アフリカのスタートアップへの投資の現状と傾向 其の7》【Pick-Up! アフリカ Vol. 120:2021年3月3日配信】 – Link

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