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題:Master cardがアフリカ農業バリューチェーンのデジタル化に向けたプロジェクトを始動!(シリーズ:アフリカの農業とテクノロジー 其の1)
訳 : MastercardとEcobank Groupがアフリカのバリューチェーンのデジタル化のために協定。
英題:‘Mastercard and Ecobank Group partner to digitize agricultural value chains in Africa’
こんばんは!pick-up!アフリカです。いつも記事をご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、「アフリカの農業とイノベーション」と題して、アフリカの主要産業である農業と、それを取り巻く様々な問題に対する新たなイノベーションについてご紹介します。
記念すべき第一弾である今回は、農業と金融テクノロジーに関する新たな動きについてご紹介します。
内容と背景:
アフリカ農業における金融サービスの現状
農業はアフリカにおける主要産業の一つです。McKinsey and Companyが発行しているこちらのレポートによると、サブサハラアフリカの全人口の60%以上が小規模農家であり、農業部門のGDPはアフリカ大陸全体の約23%にあたると推定されています。
一方で、こちらのサイトでは、アフリカの農業における銀行へのアクセスの低さについて指摘されています。
同サイトによると、アフリカの農業部門において銀行からのアクセスを受けているのは全体のわずか3%にしか満たず、その金融サービスへのアクセスの低さによって農家のビジネスの拡大や、不作による収入の低下に対する保障が妨げられている可能性が示されています。
以前私たちの記事(アフリカにおける農業保険の重要性)では、ブロックチェーンの技術を用いて、アフリカの農業における農業保険の加入率の低さという課題に取り組む企業についてご紹介しました。
記事によると、サブサハラアフリカの小規模農家の農業保険の加入率は3%未満にとどまっていること、その一方で、異常気象などの環境リスクが高まっているアフリカの農業において、農業保険の重要性が増していることが記されています。
このニュース内で取り上げている企業によると、ブロックチェーンの技術の利用により、小規模農家の農業保険へのアクセスが可能になりました。
小規模農家へのデジタルマーケットの拡大
そんな中今回ご紹介するニュースによると、Mastercard社とEcobankグループは、農業従事者向けのデジタル商取引のプラットフォームであるMastercard Farm Passのサブサハラアフリカ地域の小規模農家への拡大のために提携を結んだと発表しました。
記事によると、Mastercard Farm Passとは販売者側と購入者側の様々な農業関係者が利用することのできるデジタルマーケットプレイスです。
このプラットフォームの開発により、農家はより適正な価格で農作物を販売することが可能となったほか、高品質な肥料などの投入物へのアクセスが容易となりました。
さらにデジタルデバイス上での商品の取引記録が残ることで、今まで不透明であることが多かった小規模農家の財務情報が整理され(eコマースが農業の流通を変えるより)、小規模農家の信用性が保障されることで、銀行からの融資の機会が増加することが期待されています。
Mastercard Farm Passは2015年にリリースされて以降、すでにウガンダ、タンザニア、ケニア、インドの約100万人の農家を対象に、農作物の価格を25~50%引き上げ、生産性を高めることに成功しています。
今回パートナーシップを組んだEcobankグループはトーゴに本部を置き、西・中央アフリカを中心にアフリカ各国に展開しているアフリカの大手銀行グループであり、同グループのアフリカ33か国に渡るネットワークを利用することでサービスの拡大を図る目的があります。
Mastercardは引用元記事内において、このようなデジタル金融プラットフォームを普及させることでアフリカの自給的農業の商業的農業への移行を促進し、アフリカ農業全体の競争力を高めることで、食糧安全保障を向上させることが可能であると述べています。
アフリカへの市場を拡大するMastercard社の狙いとは
Mastercard社はFarm Pass以外にも、多くのアフリカの農業関連事業に出資しています。(記事:Mastercardがフィンテックポートフォリオの拡大を発表より)
アフリカの農家にトラクターへのアクセスを提供しているHello TractorはMastercard社が主催している、スタートアップ企業の支援プログラムであるMastercard Start Pathに参加しており、このような活動からもMastercard社がフィンテックを中心としたイノベーション産業を活かして、新たな市場の拡大に精力的に取り組んでいることがお判りいただけると思います。
ここでは同社がアフリカの市場に積極的に進出している背景として、同社のサブサハラアフリカの事業担当をしているRaghav Prasad氏へのインタビューを取り上げた、当サイトの過去記事をご紹介します。
こちらの記事(アフリカのFintech市場の今!何が起きてるの?どうやって参入する?)によると、同氏はアフリカにおける95%という高い貨幣使用率をどのようにして解消し、そこに新たな市場を開拓できるか、また如何にしてお互いがwin-winとなる取引を行うことができるかということをキーワードとして挙げています。
これらに加えて3つ目のキーワードとして、既存の考え方からの脱却を挙げており、その方法の中に、「イノベーションを組み合わせる」ことや、「低価格で作れるプラットフォーム」などが述べられています。
今回取り扱ったMastercard Farm Passも、上記で挙げた3つのキーワードの方針に沿った企画であるように見受けられます。
引用元の記事によると、同社は2025年までに全世界で10億人と5000万の中小ビジネスをデジタルプラットフォームに接続するという目標を掲げており、今回のプロジェクトの行方と、さらなるアフリカ市場への進出からも目が離せません。
次回の「シリーズ:アフリカの農業とイノベーション」では、Microsoft社のアフリカのアグリテック事業への参入について特集する予定です。
こちらも是非お楽しみに!
Pick-Up!アフリカでは以前にも、農業とテクノロジーに関するニュースを取り上げています。下に関連記事をまとめましたので、ぜひご覧ください!
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参考記事:
1.Winning in African agriculture | McKinsey – Link
2.Agricultural Finance | MFW4A – Link
3.【コラムーVol.10:アフリカにおける農業保険の重要性 | ブロックチェーンは小規模農家の希望となるのか 2022年4月22日配信】 – Pick-Up! アフリカ – Link
4.コロナ禍でアフリカの農業に変化?eコマースが農業の流通を変える【Pick-Up! アフリカ Vol. 2:2022年1月21日配信】 – Link
5.Mastercardがフィンテックポートフォリオの拡大を発表【面白記事 Vol. 126: 2020年9月3日配信】 – Link
6.アフリカのFintech市場の今!何が起きてるの?どうやって参入する?【面白記事 vol. 73(2020年7月1日配信)】 – Link
関連記事:
1.[更新]アフリカでスマート農業は普及するのか?アフリカ農業に必要な支援とは【Pick-Up! アフリカ Vol. 1:2022年1月7日配信】 – Link
2.ケニアの農家、アプリで困難を乗り越える!?【Pick-Up! アフリカ Vol. 191:2021年7月6日配信】 – Link
3.GM作物でアフリカの農業はどう変わる?ナイジェリアとケニアが共同研究を発表【Pick-Up! アフリカ Vol.31:2022年5月13日配信】 – Link
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