目次
みなさん、こんばんは!
今日はコラムをお届けします。
本当は先週お届け予定だったんですけど、最後の最後でテーマ変更してお届けできず。
さて、今回は、最近私が個人的に色んな記事を読む中で目にすることが多いとかじている、衛星技術関連へのアフリカ諸国の取り組みでに関してです。今に始まったことではないのですが、今回のコロナの影響でインターネットの供給などに関する取り組みの必要性が再確認されたことなどもあるのでしょう。その他の事例に関してもこれから経済発展をしつつ、直面する様々な課題を解決していくことが求められているアフリカにあって、相性の良い技術・取り組みなのではないかと感じることもあります。
と言うことで、今回は、「アフリカの宇宙・衛星分野への取り組み」と題して、この分野での取り組みがどのようにアフリカの発展に貢献しそうかなど、様々なニュースを共有しつつお伝えしていきます。
1. バックグラウンドと市場の大きさ
まずはちょっとした歴史的背景と市場の大きさから。
アフリカ大陸での衛星関連の市場は今年で22年目を迎える比較的若い市場で、2019年12月時点でこれまで、12か国から41の衛星が打ちあがっています。一番多くの衛星を打ち上げているのはエジプトの9つ、次いで南アフリカの8つ、ナイジェリアとアルジェリアが共に6つで、そこに、モロッコやアンゴラ、ガーナ、エチオピア、ケニア、ルワンダ、スーダンがそれぞれ1~4つ打ち上げていると言う背景があります。
市場の大きさとしては、現在約73.7億ドル規模と言われています。今後5年間で40%成長して、約102.4億ドル規模になると予測されています。上のリストに上がっていない国ではウガンダやジンバブエが2022年までに衛星を打ち上げる計画を立てており、カメルーンやチュニジア、セネガルなども同様にこの分野に参入することを表明しています。アフリカで多くの国が科学技術(STEM)教育に力を入れていることもあり、この分野での国家予算も年々大きくなっています。
民間企業の参入という点では、現在34の大学や研究機関、政府機関から派生した企業、スタートアップなどの参入があります。ここでもやはり南アフリカが強く、21社が南アフリカを拠点に、次いでナイジェリアやモーリシャス にそれぞれ4社、エジプトに2社、スーダン、タンザニアにそれぞれ1社という内訳で活動しています。民間のこの分野への参入は年々増えていますが、世界的に見たらまだ小さな市場であることには変わりなく、まだアフリカでは約8500人程度が同分野で雇用されているというデータもその現状を伝えています。現状、これまで多くの衛星は海外団体によって製造されていますが、アフリカ連合アジェンダ2063に同分野にアフリカとして力を入れて取り組んでいくという意志も見られる用意、2017年にはAfrican Space Agencyイニシアチブも設立されています。
2. 取り組みの分野は?
アフリカ連合の「アフリカ宇宙戦略」という資料の中で、アフリカが抱える最大の挑戦は生活質需品の確保としており、そこには特に衣・食・住がしっかりできる環境を整備することから始まり、教育や産業、そして変化する社会に適応していくことなども含まれます。その中でそれらを提供していくために、これまでの宇宙工学や衛星技術の貢献から、これらがアフリカでも同様に大陸の発展に貢献するのではないかと期待されています。ここではいくつかの期待例をあげていきたいと思います。
インターネットなどの接続
この分野で一番期待されているのは、インターネット接続ではないでしょうか?
例えば、OneWeb社やSpaceX社などの取り組みなどはその一例とも言えます。世界の大きな割合が実際にインターネットにアクセスできていないことはアフリカにおいても例外ではありません。ICTの活用を国策の中心に据えている国も少なくなく、この分野に多くの投資が行われてきました。例えば、ルワンダとOneWebとの協力関係は、農村地域に、特に学校にインターネットを接続することを主な目的の一つになっていましたし、その結果、昨年打ち上げられた衛星では、ルワンダとDRCの国境沿いにある、キブ湖に浮かぶ島の学校がこの打ち上げられた衛星からのインターネット接続の恩恵を最初に受けるだろうと言われています。
学校だけでなく、アフリカの全人口の60%以上が農村部に住むと言われている現状で、また、インターネットの普及率やアクセス率が世界の平均と比べまだ低いアフリカにあって、これらを高める方法を採用することはとても重要なのです。実際、アフリカの全世帯農地約18%しか家庭でのインターネットに接続できていないことを考えると、この状況を脱出する必要がとても高いです。ただ、従来のインフラの整備だけでは、例えば2030年までに良質なインターネットへの接続を実現するためには1000億ドルもの投資が必要とも言われており、様々な方法でこれを実現していく他ないのです。
こちらの記事でも共有してきたように、特に今回のコロナ対策によってロックダウンが広く導入され、職場以外でインターネットが必要になったことなどもこのようなサービス提供の必要性を再認識させたでしょう。
土地利用・開発、画像や分析能力とモニタリング
衛星の一つの強みは、地上レベルではない空からの視線で地上で起こっていることをデータとして収集することではないでしょうか?
ナイジェリアを例にすると、ナイジェリアでは3〜5年に一回の頻度で、消費者消費レポートを発表する予定をしていたが、最初に発表されてから2019年の次号を発表するのに10年もかかったようです。その理由の一つとして、このレポートを書き上げるための聞き取り調査などを各家庭を回って行ったという理由が挙げられています。それにも関わらず、約2億人、約4千万世帯を人口として抱えると言われる中で、実際には約2万世帯しか回れなかったようなのです。これは何もナイジェリアだけでなく、他のアフリカの国々でも言えることではないでしょうか?同様に様々なアフリカに関するデータを調査しているときにとても古いものしか見つからないということを経験した人も多いのではないかと思います。衛星写真を使えば、時間帯別の人々の動きがわかるだけでなく、土地の利用のされ方、そして新たに開発する際には計画が立てやすくなるのです。
実際、これを活用し、データ解析などをし、国の位置地域で取れたデータを他地域にもアプライしたとき、町や村などよりも小さな集合体レベルで、データの正確性を55%に引き上げることができたようです。まだ始めたばかりということもありますが、この数値は今後の人材育成などの取り組みを通して高めていくことが期待されています。
密猟や災害防止、テロ対策などのための監視システム
こちらの記事でも何度か取り扱ってきましたが、上から見ることができることで、様々な対策を講じることができます。
例えば、ケニアでは、155平方マイル(約401平方キロメートル)とすごく広い国立公園の敷地をパトロールして密猟防止に取り組んでいたようです。しかし2014年にコンサルタントを招聘したことで、衛星画像にて彼らが常にパトロールしていた敷地を見たことで、そしてそれまでのパトロールから得られた情報をその地図に書き込むことで、どのような場所で密猟が行われているかなど把握しやすくなっただけでなく、密猟者の行動に対応するように自らのパトロール戦略も変えて対策できるようになったようです。また、例えば動物にGPSを埋め込むことで、動物の行動パターンをも分析することで、それぞれの動物の行動に合わせた保護策や土地利用をも計画できるようになるようです。
タンザニアやザンビアでは世界的な自然保護団体、The Nature Conservancy(TNC)とパートナーシップを組み、森林伐採や草原の現象への対策として、衛星画像の使用を導入しています。ナイジェリアではボコハラムなどのテロ活動への対策として衛星画像の活用などを行っているようです。
3. どんなパートナーシップ?
中国やロシアを中心に、英国、イスラエル、日本、アメリカ、カザフスタン、インド、ウクライナなどが衛星の製造や実際の発射においてパートナー相手となっていることが多いようです。製造に関しては、2019年時点で、全衛星の約60%が海外団体によって製造されたというデータがありまだまだ、アフリカのエンジニア中心とは言えないようです。しかし、現在はエジプトにその本部を持つ、アフリカ連合内でAfrican Space Agencyを設立するなど、アフリカ大陸としてもこの分野の重要性は高いようで、今後多くの取り組みが行われていきそうです。ただ、発射技術や、実際の製造技術の低さはまだ課題で、それらの分野で他国、あるいは海外の企業とパートナーシップが結ばれています。もちろん、用途によって、それに必要な人材育成などの新たな要素もパートナーシップに加えられていくでしょう。
私たちのサイトでは東京大学とルワンダとが行ったキューブサットの打ち上げのニュースが大きな注目を浴びました。この7月にはRwanda Space Agencyが設立される予定でアフリカで同様の機関を持つ9つの国の仲間入りをすることになりました。
4. 期待度は?
全てではないものの、大陸の抱える様々な課題を解決する一つの方法としてこの分野への各国政府の興味は高まっているようです。また市場規模は現在小さいが、先にあったように2024年までには100億ドル規模の市場になるだけに、期待は持てるようです。
色々と調べていると、アフリカの衛星関連の情報を発信するウェブサイトや記事も増えてきているようで、関係者にとってはアフリカ全体がそうであるように、この分野も一つのブルーオーシャンとしてみられているようです。
しかし、期待値だけでなく、一つ一つのプロジェクトに大きな数字が動くことから、とある記事では、ポテンシャルの高い分野であるけれど、汚職にもつながりかねないという懸念が書かれていた。
関連記事には様々な記事や、プレゼンテーションも載せていますので、さらに興味をお持ちの方は是非訪問してみてください。
.
関連記事:
- 「NewSpace Africa Industry Report」 – Link
- 「2019 Might Be The Best Year So Far For The African Space Industry」 – Link
- 「Top Stories That Shaped The African Space Industry In 2019」 – Link
- 「African Space Industry Now Generating Over USD 7 Billion Annually」 – Link
- 「African space industry generating over USD 7b annually, to exceed USD 10b by 2024, report」 – Link
- 「Why you need to bother investing in the African Space Technology sector」 – Link
- 「Scientists say satellite imagery and machine learning advances will boost African consumer data」 – Link
- 「Space tech is helping conservation efforts better inform development in Africa」 – Link
- 「Space programs will boost development in Africa」 – Link
- 「Africa reaches for the stars」 – Link
- 「Egypt to Host African Space Agency’s Headquarters – Foreign Ministry」 – Link
- 「Rwanda Space Agency to be operational in July」 – Link
- 「Rwanda collaborates with Japan to launch satellite」 – Link
- 「COVID-19: Why African Countries Need to Step-Up Their Space and Satellite Sector」 – Link
- 「African Space Strategy: For Social, Political and Economic Integration」 – Link
- 「Space Technologies for Sustainable Development in Africa」 – Link
- 「China, Africa, and the Rest: Recent Trends in Space Science, Technology, and Satellite Development」 – Link
- 「Africa needs about USD100 billion to achieve quality internet access by 2030」 – Link
- 「ルワンダ宇宙庁が今年7月より設立!他、通信業界に関する話題【面白記事 Vol. 46: 2020年5月28日配信】」 – Link
*本記事、およびアフリカ進出に関するお問い合わせなどございましたら、こちらのフォームからお願いいたします。
また、日本ルワンダビジネスコミュニティでは本企画に協賛いただける企業、団体、個人を募集しております。詳しくはこちらをご覧ください。
アフリカランキング
海外進出ランキング