こんにちは!Pick-up! アフリカです。

アフリカ大陸では計1000〜2000もの言語が使われているそうですが、アフリカの言語といえばスワヒリ語を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。実はスワヒリ語は、少なくとも500万人以上もの人々に話される数少ない言語の一つで、世界で10番目に話されている言語だそうです。1.5億人以上もの人々に話されているという推定もあります。

国連は、2022年に7月7日を「世界スワヒリ語デー」に定め、今年は2回目のお祝いがなされました。

そんなスワヒリ語は、最近のアフリカ大陸結束の動きと呼応し、多くの人々によって世界に認められプレゼンスを拡大させるよう働きかけが行われています。

今回の記事では、スワヒリ語の歴史・話されている国から、最近の情勢、そしてその意義までご紹介していきます

ぜひご覧ください!

スワヒリ語の普及と歴史

そもそもスワヒリ語とはどんな言語なのでしょうか。スワヒリ語は東アフリカのインド洋沿岸で生まれ、ソマリアのモガディシュからモザンビークのソファラまで2500kmにわたる沿岸部で話されるようになりました。そして大陸から離れたコモロやセーシェルにまで広がりました。

スワヒリ語圏は昔から貿易やヒトの移動の要所で、アフリカ大陸だけでなく欧米・インドネシア・ペルシャなどの多くの人が交わり、その結果スワヒリ語が広範囲に知られ、話されるようになりました。アフリカ大陸においても、沿岸部だけでなく内陸部にも広がりました(地域や国によって方言のような違いが見られます)。

現在スワヒリ語が話されている国はタンザニア(国語)、ケニア(国語)、ウガンダ(公用語)、ルワンダ(公用語)、ブルンジ、コンゴ民主共和国(国語)、南スーダン、ソマリア、モザンビーク、マラウイ、ザンビア、コモロ、そして中東のオマールやイエメンでも話されています。

このように数多くの国で話されているスワヒリ語は、AU(アフリカ連合)の公用語となっています。

スワヒリ語圏(wikivoyageより)

なぜスワヒリ語がアフリカ大陸で広く親しまれているのか

スワヒリ語拡大の動きに大きな役割を果たしたのは、主に

・中世〜近代…ムスリム商人の貿易活動とそれに伴うスワヒリ語需要の拡大

・植民地時代…植民地独立運動時代における独立の証としてのスワヒリ語の位置付け

が挙げられます。以下は詳しい解説です。

中世〜近世 ムスリム商人の貿易活動に伴うスワヒリ語の拡大・普及

もともとスワヒリ語の拡大の動きの背景には、東アフリカ沿岸部に進出し、貿易によって利益を得ていたムスリム商人が大きな役割を果たしていたようです。

こちらの文献によると、ムスリムが東アフリカとの関係を持ち始めたのは7世紀のヒジュラ(イスラム教の預言者・ムハンマドがメディナに聖遷した出来事)の時で、一部のムスリムが東アフリカに逃げてきたことがきっかけだそうです。

そこからムスリム人と現地のスワヒリ語話者間の結婚や、ムスリムのスワヒリ文化への順応が進みました。

ムスリムの人々はアフリカで入手した交易品(ヒョウの皮、カメの甲羅、ダチョウの羽、ワックス、象牙など。18世紀〜19世紀には中央アフリカからの奴隷、金など)により、国際貿易で利益を得ました。その過程でスワヒリ語の拡大が起こったわけですが、主な要因として考えられることとして、以下のことが挙げられています。

スワヒリ語が東アフリカ沿岸部の国際貿易におけるコミュニケーション言語として用いられた

★スワヒリ語を習得したムスリムが、コンゴをはじめとする東アフリカ地域に進出し、沿岸部だけでなく現在のコンゴ、ルワンダ、ブルンジなどの東アフリカ地域にもスワヒリ語が広まった。

★ムスリムはイスラム教を現地社会で布教するためにスワヒリ語を使用し、また学校でスワヒリ語を教えるようになった。よってイスラム教の普及とともにスワヒリ語も普及した。

植民地独立運動時代 独立の証としてのスワヒリ語 

こちらの記事によると、スワヒリ語はアフリカ諸国の植民地独立運動時代に、アフリカ大陸の団結・統合を後押しするものとして機能しました。東アフリカのケニア、ウガンダ、タンザニアでは、スワヒリ語が政治的協力のために使われました。

アフリカ諸国で使用言語は違えども、一部の人々は、スワヒリ語の台頭が植民地支配からの真の意味での独立の証と考えていました

そのような背景は、スワヒリ語がアフリカの多くの国で話され、親しまれている一つの理由だと考えられます。

スワヒリ語をより広めようとする最近の動き

近年、スワヒリ語のアフリカ大陸内および国際社会の場におけるプレゼンスを向上させるような働きかけが活発化しています。

例えばこちらの記事によると、タンザニアはスワヒリ語の普及と公用語化を熱心に働きかけており、タンザニア法務大臣はスワヒリ語を国際連合の公用語に含めるべきだと主張しているそうです。

また、参考記事によると、ルワンダでは人口のたった0.7%しかスワヒリ語を話さないにも関わらず、近年スワヒリ語を公用語に制定しました。この背景には、東アフリカ共同体(EAC)のメンバー国としての義務を果たすほか、経済的な地域統合から得られる恩恵を拡大するという目的があるようです(参考記事)。

また、ブルンジやコンゴ民主共和国もスワヒリ語を公用語にすることを視野に入れ、準備段階にあるとのことです。

しかし実態としてスワヒリ語の普及は道半ばになってしまっています。東アフリカ共同体(EAC)はスワヒリ語を公用語にするという宣言こそしたものの、実際は立法議会で完全に採用されていないようです。こちらのニュースでは、東アフリカ共同体(EAC)の立法議会においてスワヒリ語での発言を希望した議員に対して、複数の議員が反対し、英語のみで討論を進めるべきだと主張したということが報道されています。

またこちらの記事では、東アフリカ共同体(EAC)ですらスワヒリ語の公用語化がうまく進まない理由として、加盟国のスワヒリ語普及状況の違いが挙げられています。東アフリカの国々はスワヒリ語を公用語や国語としている国が多いですが、そのほかの地域でスワヒリ語を話している国は少ないのが現状です。

また、スワヒリ語は植民地時代以前に東アフリカ沿岸地域から来た奴隷商人が使っていた言語だとして、スワヒリ語を批評する人もいるそうです。

AIの恩恵を受けるスワヒリ語

こちらの記事によると、スワヒリ語は最新のAI技術・サービスにも対応されているようです。

例えば、Googleが開発した生成AIの「Bard」は、40言語に対応していますが、そのうちサハラ以南のアフリカ言語はスワヒリ語のみだそうです。

また。Googleのその他のサービス(Docs、Gmail、Drive、Google Lense)もスワヒリ語に対応しているとのこと。

Googleサービスの他にも、ChatGPTやAirbnb、WhatsApp、Spotifyを始めとする様々なサービスも、スワヒリ語に対応しています

スワヒリ語をデジタルサービスに対応させることは、サービスを提供する側にとって新たなマーケット開拓としての恩恵をもたらすだけでなく、スワヒリ語話者にとっても大きな恩恵となります。

スワヒリ語の普及はアフリカ大陸にとってどんな意義があるのか

それでは、スワヒリ語がアフリカ大陸や国際社会の場で普及させる意義は何なのでしょうか。

その一つに、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)への貢献が挙げられます。

アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)とは、アフリカ諸国の産業成長や生活水準の向上を目指すべく、大陸内の人・モノの移動を自由化し、域内のビジネスと貿易を活発化させる取り組みのことです。(詳しくはこちらの記事をご覧ください。)

こちらの記事によると、アフリカ大陸の人々や大使は、スワヒリ語がアフリカ大陸の仕事の場の使用言語として採用されれば、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の施行や国境を越えた貿易の効率化が期待できると、主張しているそうです。

国際的にスタンダードなスワヒリ語を共通語にすることができれば、言語の壁が解消され、貿易やビジネスが簡単にできるようになります。

それだけでなく、アフリカ諸国(特にローカルな)女性貿易商が直面している言語の壁を取り除くこともできるようです。農村部では女性の割合が高く、国境の税関職員や貿易関係者とコミュニケーションを取れないと、貿易の場から閉め出されてしまうためです。

おわりに

いかがでしたでしょうか?スワヒリ語はアフリカ最大の言語であるために、最先端技術やイノベーションの影響を受けながら、さらに普及する可能性がある言語であり、さらにはアフリカ大陸のビジネス環境、ひいては経済を向上させる可能性を秘めているようです。(筆者の所属するルワンダの大学では、東アフリカ諸国からの留学生が集まり、留学生同士で話すときは頻繁にスワヒリ語が使われています。)

その一方で、スワヒリ語以外の諸地域言語の衰退が危惧されるという現実もあり、様々な意見が見られるようです。

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