記事:ワクチンが期待したほど効率的にアフリカ諸国に到達しなかった理由

Why Vaccines Haven’t Reached African Countries As Efficiently As Hoped

記事リンク:

https://www.wbur.org/npr/1013266722/why-vaccines-havent-reach-african-countries-as-efficiently-as-hoped

内容と背景:

本日は、新型コロナウイルスのワクチン接種に際してアフリカ諸国が直面している課題について、WHOのPhionah Atuhebwe博士との対談がまとめられたものをピックアップしました。

ワクチン接種率は人口の約1%にも満たない?

インドで一番最初に見つかったデルタ型変異株は、アフリカ大陸全体に急速に広がり、第三波を引き起こしているということが連日報告されています。
しかし、アフリカ大陸ではワクチン接種のペースが遅く、人口の約1%のみしかワクチン接種を受けることができていません。

そこでこの記事では、新型コロナウイルスのワクチンが効率的にアフリカに到達しなかった理由をWHOのPhionah Atuhebwe博士(アフリカ向けの新型ワクチン導入担当官)との対談を通して示しています。

COVAXについて

はじめに、アフリカのワクチン供給を支える仕組みとして、かねてから注目されていた「COVAX」というスキームがあります。これは、高・中所得国が自ら資金を拠出し、低所得国へのワクチン供給を行う仕組みのことです。このCOVAXには170カ国以上が加盟し、経済力に左右されない公平な供給体制で「ワクチン格差」の是正が目指されています。

このCOVAXのスキームを生かして、アフリカの国々には実際にワクチンが供給されていました。この対談の中でPhionah 博士は、アンゴラ・エスワティニ・ガンビア・ナミビア・ルワンダ・ウガンダの国々が、COVAXの供給量の100%を使い切り、ワクチンを最速で展開できた国々であると賞賛しています。これらの国々は、訓練を受けた医療スタッフやロジスティクスの面で適切な能力を備えていたことが理由として挙げられています。

一方で、COVAXからの供給は受けたものの、約20カ国の国々が供給量の半分以上を国内で展開することができなかったということが示されています。
その原因としては、運営資金の面が原因となり、医療従事者への訓練、ロジスティクスの面などが順調に進まなかったということが挙げられていました。

インドワクチン・輸出制限による影響

アフリカ諸国へのワクチン供給の流れのなかで一番の打撃となったのは、インドのワクチン輸出制限です。多くのアフリカ諸国はインドからワクチンを受け取ることになっていました。しかし、インド国内での大規模なパンデミックの元、ワクチンの輸出制限につながってしまい、当初想定されていた通りのワクチンを供給することができなくなってしまいました。

この対談の中で、そのインド製のワクチンを代替するための対応策としては、G7などの国々に寄付を呼びかるという措置が取られたということが示されていました。しかし、その対応策でもインドが供給する予定だった量をまかなえる数には至っていないということです。

今後の対応としてこの対談の中では、中国のワクチンであるJohnson&Johnsonを緊急使用リストに追加したということが言及されていました。供給時期は第3四半期の後半に予定されており、今年の初めにはさらに多くのJohnson&Johnsonの供給量が見込まれています。
関連記事でご紹介しているユニセフの記事によると、2022年末までにアフリカ連合(AU)の全加盟国55カ国に、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の1回接種新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを最大2億2,000万回分供給する契約を締結したということが示されていました。

新型コロナウイルスは神話?

そのほかに、この対談の中ではアフリカ諸国では、人々が新型コロナウイルスに危機感を持っていなかったり、コロナウイルスは実際に人々に危害を与えるものではなくただの神話であるというように受け取られている国があるということを言及しています。

このような考え方が広がることで、ワクチンの普及にも大きな遅れをとっている国が散見できるということも述べられていました。

一方でワクチン接種が進んでいる国では主に、大統領や国のリーダー格となる立場の人が、積極的にワクチンを接種し、国民へワクチンの信頼性を啓蒙しているということが言及されていました。

どの国でも、迅速にワクチン供給を行うために、必要な仕組みを整備することが必要であるということが理解できます。また、多くの国々が国民への供給の難しさを呈している一方で、同じアフリカ大陸であっても、グッドプラクティスとして賞賛されている国々が少なからず存在しています。特にCOVAXの供給量の100%を使い切った国々のような取り組みは、他のアフリカ各国も参考にできる良い指標になるのではないかと感じました。

関連・参考記事:

  1. 新型コロナウイルス アフリカ55カ国へのワクチン供給を支援 22年末までに2億2,000万回分 – Link
  2. アフリカのコロナワクチン接種事情:アフリカにとって最も良い会社は?【Pick-Up! アフリカ Vol. 104:2021年2月11日配信】- Link
  3. タンザニア大統領の死去、アフリカ周辺国・タンザニア国内への影響は?【Pick-Up! アフリカ Vol. 131:2021年3月18日配信】- Link

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