目次
みなさま、こんばんは!
本日は宇宙・衛星分野に関連する話題として、気候データや衛星データがアフリカ経済に大きな経済的利益をもたらすだろうと述べている世界経済フォーラムの記事をご紹介しています。
ぜひアフリカの宇宙・衛星分野に関して紹介しているPick-Up! アフリカの過去の投稿と合わせてお読みください。
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記事:「衛星データがアフリカに20億ドル相当の経済的利益をもたらす可能性とその理由」
「Climate data presents a $2 billion opportunity in Africa alone. Here’s why」
記事リンク:
https://www.weforum.org/agenda/2021/01/climate-data-2-billion-opportunity-in-africa-davos-agenda/
内容と背景:
Pick-Up! アフリカでは昨年5月の記事や7月のコラム、また8月に開催したオンラインイベントにて、アフリカの宇宙・衛星分野への取り組みをご紹介し、同分野の成長がインターネット接続や土地利用、また災害防止などの観点でアフリカ経済に大きく貢献するだろうとお伝えしてきました。
本日は再びアフリカの宇宙・衛星分野に関連する話題として、Digital Earth Africa(DE Africa)というプロジェクトを取り上げ、衛星データや気候データの普及が地球観測(Earth observation:EO)業界の成長促進や違法な鉱物採掘の取り締まり、また農業生産性の向上という観点でアフリカに年間最大計20億ドル相当の経済的利益をもたらすだろうと紹介している世界経済フォーラムの記事をピックアップしています。
記事によると、土地や水資源に関する様々な洞察を提供する衛星画像の多くはアフリカでは通常無料で公開されるものの、その大きすぎるデータサイズやデータ処理能力の低さが原因で、一般的にアクセスおよび分析されることは少ない点がこれまでその普及の課題点として挙げられてきました。
このように宇宙セクターの提供するオープンデータの価値が多くのアフリカ経済や社会で十分に活用されていない中、今回記事で紹介されているDE Africaではそのアクセス促進に向けた取り組みが行われています。
米国の健康慈善団体Helmsley Charitable Trustとオーストラリア政府から資金提供を受けるDE Africaでは、2019年2月より科学、政策、また農業など様々な分野の意思決定者が衛星画像にアクセスし易くなるように、Open Data Cubeと呼ばれる地理空間データへのアクセス、管理、また分析を可能にする独自のプラットフォームを活用して衛星画像を他の情報に変換し、その品質や可用性の改善に取り組んでいます。記事にも画像が掲載されているのですが、変換された情報は様々な利害関係者が素早く意思決定に利用できるよう、簡潔に数値化、また視覚化されているようです。
今回ピックアップしている記事では、DE Africaのもたらすであろうアフリカ経済へのインパクトに関して、世界経済フォーラムの詳細な分析も紹介されています。
世界経済フォーラムによると、DE Africaは次の3つの観点で、アフリカに年間最大20億ドル相当の経済的利益をもたらす可能性を保持しているようです。
- 違法な鉱物採掘の取り締まり
Pick-Up! アフリカでも昨年9月や10月の投稿でご紹介していますが、世界の金生産の5分の1はアフリカで行われているように、世界の中でもアフリカは鉱物採掘が盛んな地域として知られています。しかし、その採掘はしばしば違法なルートで行われ、財政収入の減少、また違法な資本流出の増加をもたらしています。さらに違法な鉱物採掘は森林の伐採、また水や土壌の汚染など環境に多大な悪影響を及ぼし、マラリアやその他の病気の発生源を増加させています。
このような状況の中、DE Africaは衛星データによる詳細な地球観測画像を提供することで、これらの違法な鉱山を特定し、アフリカに少なくとも年間9億ドルもの経済的利益をもたらすだろうと期待されています。
- 地球観測業界の成長促進
地球観測は従来より土地利用や災害防止に役立つとして重要なデータソースであると言われてきましたが、アフリカでは未だ未開拓の分野として知られています。そんな中、DE Africaはデータインフラストラクチャのギャップを埋め、同セクターに5億ドルもの年間収益をもたらすだろうと記載されています。具体的には、収益の増加によりセクターへの投資も増加し、若者への高給な雇用の創出、高度な技術への投資、また税務当局の財政収入の増加がもたらされるだろうと期待されています。
- 農業生産性の向上
サブサハラアフリカ地域では人口の60%以上が小規模農家であり、GDPの約23%は農業セクターからきています。Pick-Up! アフリカでも度々お伝えしていますが、これらのデータからわかるように、農業セクターはアフリカ経済や社会の中で非常に重要なセクターと位置付けられています。そんな中、アフリカでは多くの小規模農家が情報へのアクセス不足から洪水や干ばつなどに対処できず、生産性の低さに悩まされています。
DE Africaのプラットフォームでは国全体の水、土地、また気象の変化を詳細に追跡できるため、農家に対して信頼できる天気予報や水の利用可能性、また作物開発の傾向に関する情報の提供を可能にし、農業の生産性を向上させることができるだろうと期待されています。世界経済フォーラムはDE Africaがアフリカの農業セクターに年間約9億ドルもの経済的利益をもたらし、食料安全保障を強化させるだろうと分析しています。
ルワンダでも昨年7月に宇宙庁が新設されたように、アフリカでは近年宇宙・衛星分野での動きが活発化していますが、DE Africaがフォーカスしているように、データの可用性を強化するだけでなく、そこから得られる情報へのアクセスを強化することも重要であると考えられます。
記事では地球観測画像が経済にもたらすメリットを最大化するためには、エンジニアの育成プログラムの強化や、知的財産法の改定、また官民パートナーシップの促進を通じた起業家や国際投資家によるセクターへの投資の強化が必要であると記載されています。知的財産法の改定が課題の一つとして挙がっている背景には、衛星データによって得られる情報をビジネスとして使用する場合、独自のアルゴリズムを構築し、情報の権利を保守する必要性が生じることが挙げられます。
関連記事には本日ピックアップした記事のもととなっている世界経済フォーラムの発表しているレポート、またアフリカの宇宙・衛星分野に関して紹介しているPick-Up! アフリカの過去の投稿を載せています。ぜひ合わせてお読みください。
関連記事:
- 「Unlocking the potential of Earth Observation to address Africa’s critical challenges-INSIGHT REPORT JANUARY 2021」–Link
- 【最終盤】アフリカでの違法な資本流出に関して国連が最新のレポートを発表!「面白記事 Vol.150:2020年9月30日配信」–Link
- 児童労働:ビジネスと人権〜コンゴ民主共和国の鉱山の課題【Pick-Up! アフリカ Vol. 10:2020年10月15日配信】–Link
- コラム – Vol. 4: アフリカの宇宙・衛星分野への取り組み–Link
- ルワンダ宇宙庁が今年7月より設立!他;通信業界に関する話題【面白記事 Vol. 46: 2020年5月28日配信】–Link
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