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本日は、コンゴ民主共和国から、コバルト産業の中で問題視されている児童労働について書かれた記事をピックアップしてご紹介します。国際的な背景や動向を元に、今回はビジネスと人権の最新のトピックについて考えてみたいと思います。

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記事:コンゴ民主共和国、テスラは児童労働とどのように戦うべきか

How Tesla Should Combat Child Labor In The Democratic Republic Of The Congo

記事リンク:https://www.forbes.com/sites/michaelposner/2020/10/07/how-tesla-should-combat-child-labor-in-the-democratic-republic-of-the-congo/#514e5b7d5cd0

内容と背景:

電気自動車や太陽光発電を開発・製造・販売しているアメリカの企業テスラが、2030年までに2,000万台の電動車両を製造する計画を発表したことはご存知でしょうか。

これは、アメリカ・カリフォルニア州の知事が「2035年までに州内で販売されるすべての新車乗用車をZEV(ゼロ・エミッション・ビークル=無排出ガス車)にすることを義務付ける」という方針を打ち出したことに起因しているようです。

環境汚染を伴う影響により問題視され、その削減を余儀なくされている炭素排出量ですが、その削減によってバッテリー駆動の車が台頭してくると、新たな問題になってくるのが、そのバッテリーの原料となるコバルトなどの鉱物の劣悪な採掘環境です。

この記事では、コンゴ民主共和国で主に採掘されているコバルトについて、その採掘にあたって児童労働や、過酷な労働がなされていることを問題視しています。

コバルトは、バッテリーだけではなく、私たちにとても身近な携帯電話やノートパソコンなどの電子機器に使用されているレアメタルの一つです。コンゴ民主共和国では、その産出量で世界の70%以上を占めていると言います。

この記事で参照されているChild Labor and Forced Labor Reportsによると、「コンゴ民主共和国のコバルト鉱山労働者の職人255,000人のうち35,000人が子どもである」という推定値が示唆されています。

その中で、この記事では、このような現状を問題視し、業界全体の人権基準と指標、およびそれらの基準を実装してコンプライアンスを評価するシステムを作成するために作られたCobalt Action Partnershipという新しいイニシアチブについて紹介しています。

このイニシアチブには、ドイツの自動車メーカーであるBMWとフォルクスワーゲン、電池材料メーカーであるBASFなどが賛同しています。このパートナーシップは、政府、鉱山所有者、市民社会組織、鉱山労働者自身を含むコンゴ民主共和国の地元の関係者と密接に協力して、児童労働と闘い、危険な労働条件に対処するための効果的なシステムを構築することを目的としています。
これらの基準を採用し、準拠していると見なされる企業は、児童労働と鉱山の安全性の問題に取り組んでいることを顧客に保証することができるということです。

しかしながら、フォード、ゼネラルモーターズ、クライスラー、テスラなど、アメリカの自動車メーカーはこのイニシアチブには賛同していないということが言及されています。
6月、テスラは、鉱山開発及び商品取引を行う多国籍企業の1つであるグレンコアとのパートナーシップを発表しました。グレンコアは、コンゴ民主共和国でコバルトを採掘しており、リチウムイオン電池を使用しています。テスラは、グレンコアからコバルトを購入し、ドイツと中国で独自のバッテリーを製造する予定だということです。

また、他の記事ではテスラは現在、コンゴ民主共和国での児童鉱山労働者の死傷者について、Apple、Google、Microsoft、Dellとともに損害賠償を求められているいう記載も見つけました。

バッテリー駆動車の生産をリードし、環境の保全を促進する働きの一方で、人権の国際規範を遵守するということが国際社会で求められている態度なのではないかと感じます。

昨今では、国連により、ビジネスと人権についてNAPと呼ばれるNational Action Planを世界のそれぞれの国で作られることが課されています。アジアの中ではタイが一番先にこのプランの策定を完了させました。日本は少し出遅れた形にはなっていますが、現在急ピッチでこのNAPの策定に取り掛かっているということです。

また、この記事の中でも言及されている「人権デューデリジェンス」がNAP策定の一つのキーワードとして重要な立ち位置にあるそうです。

あらゆる産業のサプライチェーンの中で、全てのステークフォルダーに対して、人権の侵害が起きていないかどうか精査し、もし発生してしまった場合は、どこがどのように責任を負うのか、そういった部分を明確に定めて議論する必要があるようです。

このようにこの記事で言及されているような児童労働はアフリカの一国だけの問題ではなく、世界規模ないし、その先の企業、市民社会、個人が協同し解決していくものであるということが理解できます。

消費者としても、普段何気なく使用しているスマートフォンの中身にコンゴ民主共和国で産出されるコバルトが使われていることをまずは知ることが必要です。その上で、SDGsの目標12でも言及されている「つくる責任、つかう責任」について、「人権」のポイントで考えることが大切なのではないかと感じました。

関連・参考記事

  1. コラム – Vol. 5: SDGsからみるアフリカの経済成長 – ディーセントワークの視点 – Link
  2. 命を削って掘る鉱石 コンゴ民主共和国における人権侵害とコバルトの国際取引(報告書概要部翻訳) AMNESTY INTERNATIONAL – Link
  3. RCS Global and RMI Partner to Support Cobalt ASM Producers – Link
  4. Top tech firms sued over DR Congo cobalt mining deaths – Link
  5. 人権外交 ビジネスと人権 – Link


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